SOLA TODAY Vol.868
ニュース報道というのは、両刃の剣だと感じることが多い。
スクープによって不正が明らかになり、大きな事件が解決したことは数え切れないほどあるだろう。でも同時に、心ない報道によって大勢の人を苦しめているのも事実。
それは避けられないことで、ここで書いたところでどうしようもないことはわかっている。すべての人にとって意義のある報道をするなんて不可能だから。
でもこんなこと報道して大丈夫かな、と思うことが多くなったのは事実。今朝もネットのニュースを見ていて驚いた。
「壬申戸籍」か、ヤフオク出品=一時落札、身分記載で閲覧禁止-専門家「悪用恐れも」
古代史オタクのボクは、思わずこのタイトルに反応してしまった。『壬申』という言葉に、天武天皇と大友皇子が戦った『壬申の乱』を思い浮かべたから。何か当時の記録で新しい史料が見つかったのかと思った。
ところがまったくちがう。これは明治になって作られた戸籍のことで、身分が記載されていることで閲覧禁止になっているものらしい。こんなものが存在することなんて、まったく知らなかった。
江戸時代の身分制度の名残なんだろうね。平民や士族という当時の身分だけじゃなく、犯罪歴や職業まで記載されている。同和問題を考慮して、封印されたのだろう。例え子孫であっても閲覧はできず、法務局で厳重管理されているとのこと。
この『壬申戸籍』なるものがヤフオクに出品された可能性が高いので、ニュースになるのは理解できる。幸いにもYahoo!が出品から除外したそうで、13万円の値段がついた『壬申戸籍』らしきものが流出することはなかったそう。
ただこのニュースを見て、ボクのように初めてこの戸籍の存在を知った人は多いと思う。そして高値がつくということも。つまりこの報道をきっかけにして、新たな犯罪や差別を生んでしまうかもしれない。知らなければそれで済んだのに、寝た子を起こすようなことになった気がしてならない。
それだけに報道って難しいよね。水泳選手の池江さんが、白血病であることを明かした。それに対して応援の声が集まるのは、報道に関する素敵な面だと思う。
だけどワイドショーなんかをチラッと見ていると、まるでその事実がうれしいかのような報道をしている。病気のことを取り上げて、専門家らしき人間が好き勝手に語っている。
そのうえ桜田大臣のとんでもない発言が最悪な状況を招いている。マスコミがその発言を騒ぎ立てるのはわかるけれど、それが池江選手の耳に入ることなんて考えもしてない。知る必要のないことを彼女に無理やり聞かせているかもしれないのに。
あの発言はひどすぎるけれど、マスコミが火に油を注いでいるようにしか見えない。どうせ報道するなら、彼女に対する応援の声をもっと強調するべきだと思う。それくらいの配慮があっていいんじゃないかなぁ。
報道機関が中立を守っていると信じている人は、若い世代を中心に減少している。事実が意図的にねじ曲げられることがあるのを隠せない時代になった。だったらそれを素直に認めて、より思いやりのある捻じ曲げ方ができないのかな? 最近のニュースを見ていると、そんなことを感じてばかりいる。
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