高羽そらさんインタビュー

とても切ないトレードオフ

人生というのはうまくできたもので、何かを得ようと思えば、何かをあきらめなければいけないことが多い。

 

だから選択を迫られたそのとき、自分にとって大切だと思える道を進んでいくしかない。ボクがいまでもよく思うのは、最初に入った大学を中退しなかったらどうなっていたかということ。

 

こんなこと結果論でしかないし、パラレルワールドの世界を夢想しても意味がない。もし中退しないという選択をしていたとしたら、それで得るものがあったろうし、失うものもあっただろう。それがいまの自分にとってどのような影響を持つかは、考えるだけ時間の無駄。

 

それでも思ってしまうのが人間。人生がトレードオフだとわかっていても、つい考えてしまうもの。昨日読了した小説も、そんな主人公の切ない思いを強く感じる作品だった。

 

(no title)

 

 

『日の名残り』カズオ・イシグロ著という小説。

 

この作品は先に映画を観た。あまりにも素敵な作品だったので、どうしても原作を読みたくなった。そしてその期待どおり、ボクの心に今後も強く残るであろう作品となった。

 

第二次世界大戦前後のイギリスが舞台。主人公はダーリトン卿に使えるスティーヴンスという執事。そしてもう一人がその屋敷の女中頭だったケントンという人物。映画ではスティーヴンスをアンソニー・ホプキンス、ケントンをエマ・トンプソンが演じている。

 

原作を読んで驚いたのが、映画がかなり忠実に作られていたこと。戦後のスティーブンスの主人については設定を少し変えてあったけれど、それ以外のエピソードは完璧に映像化されていた。

 

だから小説を読んでいるあいだ、ボクは登場人物の二人がアンソニー・ホプキンスとエマ・トンプソンしかイメージできなかった。それほど二人の演技が素晴らしかったということだろう。

 

ただやっぱり原作は面白い。登場人物たちの人生がより奥深く描写されているので、二人のことを映画よりも身近に感じるようになった。特にスティーヴンスという人物は愛さずにはいられないほど魅力的だった。昔のイギリスには、本当にこんな執事がいたんだろうなぁ。

 

スティーヴンスにとってもっとも重視するのは、執事としての品格。それは裏役に徹しながらも、世界の動きの中心に自分がいることを自覚できることでもある。だけど人生はトレードオフ。その品格を得るためには、失うものもある。

 

ケントンは明らかにスティーヴンスのことが好きだった。結婚を持ち出して退職したのも、自分の想いに気づいてくれないスティーヴンスに引き止めてもらうためだった。だけど時代は1930年代の後半。世界が戦争に向かおうとしていたとき。

 

当時のスティーヴンスにとって、そんな彼女の想いに気づくだけの余裕がなかった。それで失望したケントンは、本当に結婚して退職してしまう。それから20年後、スティーヴンスはケントンと再会する。

 

結婚生活がうまくいってなくて、仕事を探している様子。ちょうど人手が足りないときだったので、スティーヴンスはケントンに会いにいく。その旅の途中で昔を振り返りながら、ようやくケントンに対する自分の恋心に気づく。

 

だけど時はすでに遅し。当てつけで結婚したケントンだったけれど、いまの夫を愛していることがわかった。それに再就職する気持ちもない。失意のままスティーヴンスは屋敷に戻る。そのときの彼の気持ちを想像すると、切なくて涙ぐんでしまった。

 

彼は執事としての名声と品格を手にした。だけど戦前に敬愛していた主人はナチスに加担したことを糾弾されたうえ、すでにこの世にいない。その主人のために必死に働いていたから、ケントンの想いにも気づけなかった。

 

取り戻せない昔に思いを馳せるとき、日が暮れようとする。それが『日の名残り』だった。そして彼は、執事としての自分の人生を完成させるため、再び屋敷に戻る。そして新しいアメリア人の主人のために、不得意なジョークを勉強しようと決意する。そのけなげな姿に感動するばかりだった。

 

映画も原作も本当に良かった。どちらでもいいので、この物語の世界に触れてみてはいかが?

 

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高羽そら|たかはそら(作家、小説家)プロフィール

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高羽そら(たかはそら)
今後の目標:毎年1つの物語を完成させたいと思います。
生年月日:昭和37年5月10日
血液型:A型
出身地:京都市

【経歴】
1962年京都市生まれ。数年前に生活の拠点を神戸に移してから、体外離脱を経験するようになる。『夢で会える 体外離脱入門』(ハート出版)を2012年1月に出版。『ゼロの物語Ⅰ〜出会い〜』、『ゼロの物語Ⅱ〜7本の剣の守り手〜』、『ゼロの物語Ⅲ〜次元上昇〜』の3部作を、2013年7月〜12月にかけて、オフィスニグンニイバよりAmazonのKindleにて出版。現在も新たな物語を執筆中。

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