違和感の理由がわかった
何度もブログに書いているとおり、1度読んだだけの小説や、1度観ただけの映画は大抵忘れてしまう。よほど激しく感情が揺さぶられない限り、時間経過とともに記憶が薄れていく。なんとなく良かった、どうもイマイチだった、というような漠然とした印象が残るだけ。
ただその印象の理由がふいに気になることがある。なぜ良いと感じたのか、どうしてイマイチだったのか。なんせそれさえ忘れているので話にならないwww
今日の映画は後者の理由で再見した。トム・クルーズが主演しているのに、イマイチだったという印象が残っている。今回2度目の鑑賞で、ようやくその違和感の理由がわかった。
2021年 映画#21
『ザ・マミー/呪われた砂漠の王女』(原題: The Mummy)という2017年のアメリカ映画。1932年に公開された『ミイラ再生』という作品のリブートなので、ストーリー的にはある程度固まった作品なんだと思う。
トム・クルーズ演じるニックは軍人。イラクで任務中に、図らずもエジプトのアマネット王女の墓を見つけてしまう。アマネット女王は生きながらミイラにされていて、悪魔と取引している。アマネットはニックの行動によってよみがえり、彼に呪いをかける。それは死の神であるセトを、ニックの肉体を使って再生させようというもの。
一方、アマネットだけでなく、セトも含めて悪の神を滅亡させようと画策している組織があった。ラッセル・クロウ演じるジキル博士で、薬の服用を忘れるとハイドという破壊的な人格が出てしまうという人物。そしてジキルの協力者であるジェニーという女性考古学者が、ニックと関わってくる。
ジキルはニックにセトを憑依させることで、彼ごと殺してしまおうとした。ところがアマネットの驚異的な能力によってその野望は砕かれ、追い込んだニックをセトとして転生させようとする。
ラストのオチとしては、アマネットによって殺されたジェニーを救うため、ニックは自分から進んでセトに転生する。ただしセトの誘惑に負けずにニックとしての意識を残そうとする。結果としてジェニーは生き返り、モンスターとなったニックは砂漠に去ってしまうというエンディング。
この物語で肝心なのは、ニックの『善の心』がセトに打ち勝ったということ。死の神であるセトの能力を有しつつも、ニックとしての意識を保っている。つまりニックにはセトに負けない『善』が存在していたということ。
ただし物語の前提として、ニックは悪人だということになっている。元々アマネットの墓を暴いたのも、それを売って儲けるため。だからジェニーと恋仲になって、その場所が記された地図を盗んでいる。
ところがこのニックは、残念なことにトム・クルーズが演じている。彼は過去に『コラテラル』という作品で悪役を演じたことがある。だとしても、この映画のニックはちょっとおとぼけ感があって、とてもじゃないけれど悪人に見えない。普段のトムらしく、正義の味方という空気しか発していない。
この映画がイマイチなのは、ミスキャストだと思った。例に出して悪いけれど、ホアキン・フェニックスとかジョニー・デップがニックを演じていたら、ちょっと悪いやつという前提に納得できたはず。それゆえ最後に『善の心』を見せる場面が効果的になる。
だけどトム・クルーズだと、ずっと良いやつにしか見えない。だから転生してジェニーを救おうとする場面でも、あまり感動しないんだろうなぁ。だっていかにもやりそうだからね。とりあえずこの映画がイマイチだと感じていた理由がわかってスッキリしたなぁ。
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