あの世の縁がこの世で繋がる
人間は愛や思いやりのある出来事に触れると、心が温かいもので満たされる。映画や小説の目的は、そうした心の飢えを癒やすことなんだと思う。
もう一度観たかった映画を鑑賞。ブログで紹介したばかりなので感想は割愛するけれど、今年のカウントだけしておこう。
2021年 映画#29
『アリー/ スター誕生』(原題:A Star Is Born)という2018年のアメリカ映画。
やっぱりラストシーンで号泣してしまう。彼らなりの方法で愛を貫いた主人公の二人を見ていると、悲しい物語だけれど心が深い愛で満たされる。
そして昨晩はある小説を読んで、先程の映画とはちがった形で心がポカポカになった。それは他者に対する『思いやり』にあふれていたから。
2021年 読書#16
『いっちばん』畠中恵 著という小説。『しゃばけ」シリーズの第7弾で、今回も前回に続く短編集。ただ物語には連続性がキープされていて、短編集といってもテレビの連続ドラマに近い。それゆえ過去作品とのつながりがあるので、順に読んでいくべき物語だと思う。
今回も5つの物語が収録されていた。
『いっちばん』
『いっぷく』
『天狗の使い魔』
『餡子は甘いか』
『ひなのちよがみ』
江戸の通町にある、廻船問屋兼薬種問屋の長崎屋の若旦那である一太郎が主人公。彼の祖母は力のある妖怪なので、一太郎にも妖怪が見える。でも能力はそれだけ。身体が弱くてすぐに病気をするので、祖母が派遣した二人の手代である佐助と仁吉が彼の世話をしている。もちろん二人も妖怪。
そんな一太郎だけど、頭はいい。それゆえ彼の周辺で起きた事件や困りごとを解決していく。そして妖怪が見える一太郎が暮らす離れには、彼を慕う妖怪たちが集まってくる。物語の回を追うごとに妖怪たちとの絆は深まり、双方の思いやりが物語の中心となっている。
とにかく一太郎というキャラは思いやりの塊のような人物。常に誰かの幸せを想い、そのために全力を尽くす。そんな一太郎を見ているから、妖怪たちも同じように行動する。だけどそこは妖怪。人間から見ればどこか調子ちがいなので、妙なトラブルが起きて騒動になったりするのが面白いwww
例えば単行本のタイトルになった『いっちばん』は、そんな妖怪たちの空回りが描かれている。腹違いの兄が結婚して長崎屋を離れ、となりの家の親友は和菓子作りの修行のため家を出ている。寂しくなって落ち込んでいる一太郎を勇気づけようと、妖怪たちはプレゼントをしようと考える。
だけど意見はまとまらない。3つのグループに分かれた妖怪たちが一太郎の贈り物を探すことで、なんと江戸の街を騒がせていたスリが逮捕されることになったという不思議な結末。
ボクが感動したのは『いっぷく』という物語。一太郎は少し前に、江戸の火事で臨死体験をしている。そのとき三途の川である少年と親友になった。そこで様々な事件が起きて、二人はこの世に戻ることができた。だけどその友人はこの世のどこにいるのかわからない。
ところが『いっぷく』という作品でその友人が登場する。一太郎の父が商売敵に罠をかけられて苦境に陥った。そんな長崎屋を救ってくれたのが、三途の川で別れた友人だった。一太郎のお陰で生き返ることができたので、その友人は恩返しをしたいと思っていた。
そんな二人の出会いにも、鳴家という小鬼の妖怪が貢献している。とにかく5つとも心がポカポカになる物語。このシリーズは心の飢えを満たしてくれるから、いまになってもシリーズが継続しているんだろう。ボクも見習わなければね。
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