高齢者犯罪の要因は貧困?
先日のブログで触れたように、薬物と性犯罪関連の再犯率は高い。これは人間の倫理観を肉体の衝動が超越してしまうから。それゆえ更生よりも治療が必要だと言われている。
そして以外に高いのが、高齢者犯罪の再犯率。その理由について書かれた記事は、現代社会の問題点が見事に反映されていた。
年金受給が始まった世代の犯罪が増えているそう。そして刑務所を出ても、すぐに同じ犯罪を繰り返す。その理由として一般的に理解されているのは、年金だけで暮らせないという貧困問題。
今年から年金制度が大きく変わり、65歳から支給される年金は繰上げも繰下げもできるようになった。当然ながら繰上げなら支給額が減らされ、繰下げなら増額される。ボクはその制度を利用して、還暦になったばかりだけれど繰上げ受給を申請した。かなりの減額になるけれど、いつ何が起きるのわからないのが今の時代。だから先延ばしにする理由が見当たらなかった。
だけどその年金だけで生活していける金額じゃない。といって再就職できる可能性は限りなく低い。だから年金受給と同時に犯罪に手を染める人が増えているそう。その理由は刑務所に入りたいから。
リンク先の記事で、インタビューに答えている男性の実情が切ない。家賃や光熱費を払えば、手元に何も残らない。だから自転車を盗んで、そのまま交番へ出頭したそう。それで1年の刑が言い渡された。つまり1年間は衣食住の心配がいらない。
ところが受刑中でも年金は振り込まれる。それゆえ出所したらそこそこ使っていない年金が溜まっていることになる。それで底が尽きたら、今度は包丁を手にして公園に行った。もちろん誰かを傷つける気はない。驚いた誰かに通報してもらうため。そうして再び刑務所に戻ったそう。
リンク先に極端な試算が書かれている。「200円のサンドイッチを盗んだ場合の刑期が2年なら、その刑期に840万円の税金が使われる」というもの。現実的に日本の刑務所の実態はこの試算と変わらない。だから貧困に苦しむ年金生活者は軽微な犯罪で刑務所に戻ろうとするそう。
ただこの記事では、犯罪の要因が貧困だけでないと指摘している。ボクはその内容に思わずうなづいた。
その要因とは『孤独』だということ。
いわゆる独居老人という人が増えている。貧困も辛いけれど、孤独もキツい。配偶者が存命だったり、子供や孫のいる人ならまだ孤独を癒すことが可能。性格的に社交性の高い人も、積極的に他人と関わるだろう。
だけどそうでない人は、孤独にさいなまれてしまう。ところが刑務所に行けば仲間がいる。他人と関わることができる。それゆえ、刑務所に戻ろうとする高齢者が多いという指摘だった。その説は説得力があると感じた。
もちろん貧困も孤独も、犯罪を正当化することはできない。でも現代社会において、それらが高齢者犯罪の要因になっているのは事実。といってそうした人たちを刑務所に収監しないように法改正すると、自殺してしまう高齢者が増えるような気がする。貧困と孤独が刑務所という逃げ場を失ったら、その先に見えてくるのは自死なのかも。
とても難しい問題。そして解決策が見えない。貧困に関しては年金制度を解体して、ベーシックインカムを導入するという方法もある。だけどまだ未知数が多く、時間もかかる。ましてや孤独は感覚に個人差があるので、普遍的な対応が困難。いろいろ考えてしまう記事だったなぁ。
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