大河『光る君へ』の予習はバッチリ
最近のミュージシャンは、若いのに独自の世界観を確立している人が多い。YouTuberたちは自分の作品をネットで配信できる時代。その数は想像を絶する多さだろう。
だからそんな人たちの中からメジャーデビューしたということは、すでに他の人にない『何か』を持っているということ。そんな若手ミュージシャン代表がビリー・アイリッシュ。彼女が久しぶりにシングル曲をリリースした。
映画『バービー』の挿入歌となった作品で、『What Was I Made For?』というタイトル。相変わらずの『ささやきヴォーカル』は健在。このスタイルは誰にも真似できないだろう。この新曲のビデオを観たけれど、切なくなって涙が出てきた。
少し古風なスタイルをしたビリーが、机の上に座ってケースから人間の服を並べている。無心になって作業に集中しているのに、突然部屋が揺れ、暴風が吹き、雨が降ってくる。それでも必死になって服を並べようとするビリー。その姿になぜだか泣けてしまった。
この曲の歌詞はビリー・アイリッシュによると、目的を失って、人生を謳歌できなくなってしまったことを率直に吐露したものとなっているそう。彼女はインタビューにこう答えている。
「このビデオには泣いてしまう。私にとって大きな意味を持つもので、みんなにもそれくらいのものになればと思うの。それ以外に言うことはあまりない。それ自体が物語っていると思う」
さて、日本にもビリーに負けない独自の世界を持っている女性がいた。それも平安時代の女性。著作を読んで心が揺さぶられ、彼女の世界観に感動した。
2023年 読書#68
『現代語訳 枕草子』清少納言 著 大庭みな子 訳 という書籍。平安時代に書かれた『枕草子』を読んだ。『源氏物語』の全巻を2回通して読み、『紫式部日記』も読破した。それは来年の大河ドラマである『光る君へ』を楽しむため。
そして主人公の紫式部の対極的な位置にいた清少納言を知るため、この有名な著作を初めてきちんと読んだ。現代語訳だけれどwww
とにかく面白い。文章表現がたくみで、この時代の風景がリアルに目に浮かぶ。だけど心に伝わってくるものに違和感がない。つまり平安時代の人と現代人には、本質的な人間性にさほどの違いはないということだろう。何度もうなづきながら読んでいた。
紫式部は努力型の作家だという印象だった。あれだけの物語をまとめあげたことだけでもわかる。一方、清少納言は天才肌の作家だと思う。文字と感覚が完全にリンクしていて、見たものや感じたことを、ありのままに文章にして切り取ることができる人なんだと思った。
来年の大河は紫式部なのに、なにゆえ清少納言? と思う人のために関係を紹介しておこう。この二人に直接的なつながりはなかったらしい。紫式部は少し後の時代の女性なのに、どうやらライバル視していたようで、日記で清少納言のことをボロクソに書いている程度の関係。だけど両者の世界には確執があった。
藤原道隆が権力を持っている時、娘の定子を天皇の中宮にした。その際の定子の女房が清少納言。だけど道隆が死んだことで、息子の伊周も没落。定子も早世してしまう。
道隆の後をついで権力を握ったのが弟の藤原道長。彼は娘の彰子を天皇の中宮にして、後継まで産ませている。その彰子に使えた女房が紫式部。紫式部は定子がまだ中宮だった当時、その一派にいじめられた経験があったそう。それゆえ清少納言たちにいい感情を持っていなかったらしい。
要するに、派閥の異なる部署にいたライバルだったということ。来年のドラマには道長はもちろん、兄の道隆も出てくるから、清少納言の登場もある。演じるのはファーストサマーウイカさんらしい。紫式部を演じる吉高由里子さんとの絡みがあるのかわからないけれど。
ということで『光る君へ』の予習はバッチリ。来年のドラマが今から楽しみで仕方ない。その前に『どうする家康』も楽しむけれどね。
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