本のカバーと内容のギャップに驚いた
手前味噌なんだけれど、ボクは新刊本の『夢体脱』のカバーデザインがお気に入り。不思議な夢の世界が素敵なイラストで見事に表現されているから。書籍のカバーはその本の顔であり、読者に無意識的な影響を与える効果があると思う。
ところがある小説のカバーと内容のギャップに驚いた。全く内容を知らず、直木賞の候補となったことでチョイスした小説。カバーデザインから勝手にイメージしていたので、読み始めて本気でびっくりした。
2023年 読書#82
『女人入眼』永井沙耶子 著という小説。このカバーを見て、この物語がどのような内容か想像して欲しい。ボクが最初に抱いたのはファンタジー作品的なイメージ。どこかの国の女王、あるいは魔女が活躍する物語なのかと思った。ところが読み始めてびっくり!
これは時代小説だった。物語の舞台は昨年の大河ドラマである『鎌倉殿の13人』と同時期。
主人公は周子という公家の丹後局に使える女房。丹後局は当時の関白である九条兼実と争っていて、自分の娘を後鳥羽天皇に入内させていた。次の天皇となる皇子を産ませるのが目的。さらに鎌倉幕府との繋がりを強めるため、源頼朝の娘である大姫の入内も進めていた。
そこで鎌倉に下向させて、大姫の教育係として送られたのが周子。大姫とほぼ同じ年齢の二十歳。周子は鎌倉幕府で文官のまとめ役である大江広元の娘でもある。それゆえ京都から鎌倉に送り込まれた。ちなみに『鎌倉殿の13人』で大江広元を演じていたのは栗原英雄さん。
歴史好きな人なら知っているように、大姫は木曽義仲の嫡男である義高の許嫁だった。だけど木曽義仲を頼朝が追討することになり、人質だった義高も処刑されてしまう。失意の大姫はうつ病のようになり、心を閉ざしてしまう。
そんな大姫の心を開き、その苦しみから救おうとする周子の奮闘が描かれている。京の都の人間から見た鎌倉幕府の内情という構成になっていて、ドラマでも描かれたように謀略と陰謀が渦巻いている。その嵐に巻き込まれた周子がある決断をすることになる。
まだ今年の作品なので、ネタバレはここまで。歴史的な事実として、大姫は若くして亡くなってしまう。その死に関して、この物語は新しい解釈を提示していた。それが事実かどうかではなく、この時代の女性の悲哀を描きつつも、なおかつ男たちに打ち勝っていく女性たちの姿を描いた物語だった。
最初はカバーとのギャップに驚いた。だけど読了した後でそのカバーを見ると、なるほど納得というデザインだった。これはなかなか深い。歴史好きの人は絶対に読んで損のない素晴らしい物語だと思う。なんだかんだ言っても、尼将軍の北条政子は強い。そこへ行き着く小説だった。
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