最後でがっくり
今日は久しぶりに青空が見えました。気温も高いので、自宅にいるのがもったいなような気候でしたね。
今日は引きこもりでしたので、昨日撮影した写真と同じイチョウの木です。落ちた葉も美しいですね。明日は祝日ですから大勢の人がこの木を見に来ると思います。でもかなり寒くなるようなので、冬の服装が必要かもしれません。東京は雪が降るらしいですからね。
今日のように家にいる日はしっかりと仕事をしています。小説を書いていると、当初考えたプロットから大きく離れてくることがあります。突然思いついた発想がどんどん拡大して、書いているわたしが驚くような世界観が出てきたりします。これは作者だけが体験できる楽しみですね。
でも完成された作品を二次使用する場合、相当注意をする必要があると思います。今日の午後から映画を観ていて、そのことを痛感しました。
日本で公開された時は『刑事グラハム 凍りついた欲望』。そしてビデオで発売された時には『レッド・ドラゴン レクター博士の沈黙』と変わり、タイトルがコロコロと迷走した作品です。原題は(Manhunter)なので、そのまま使えばよかったのにね。
調べてみるとこの映画が公開されたのは1988年。その後この原作の続編となる『羊たちの沈黙』が1991年に大ヒットしたので、それにあやかろうとしてレクター博士の名前を出し、『沈黙』という言葉を使ったようです。センスがいいとは言えませんね(笑)
昨日も書きましたが、わたしが原作を読んで感動した『レッド・ドラゴン』の最初の映画化作品です。借りるつもりはなかったのですが、最新版がすべて貸出中で仕方なく借りました。でも比較できるという意味で、観てよかったと思っています。
この物語の主人公はハンニバル・レクター博士ではなく、ウィル・グレアムというFBIの捜査官です。現場に行くことで、その情景を直感として知覚できる特殊能力を持っています。そして映画や物語でも明かされるように、彼自身がサイコパスでもあるのです。だから犯罪者の行動が予測できるのでしょう。
そのウィルをウィリアム・L・ピーターセンが好演していました。『CSIシリーズ』のイメージがあるので、若くて精悍な姿にびっくり。めちゃ男前だったのですね。そして犯人が唯一心を許す盲目の女性であるリーバを、わたしの大好きな女優であるジョアン・アレンが演じていました。
スタートから中盤にかけて、とてもいい雰囲気で始まりました。かなり原作に忠実に作ってあって、犯人を追い詰めようとするウィルの苦闘が見事に描かれています。使われていたトリックもうまく活用されていました。妻のモリーの連れ子が実の子になっていたりして、若干の設定は変わっていました。
楽しんで観ていたのですが、最後の最後でがっくりしました。この映画を原作者のトマス・ハリスが観たら怒ったのではないでしょうか? それほど肝心な部分がすっぽ抜けた映画になっていました。
犯人のダラハイドが登場しますが、彼のこれまでの人生についてほぼ触れていません。幼いころに虐待を受けたのだろう、とウィルが語るだけです。だから肝心のリーバという女性が登場しても、彼の善と悪の葛藤が伝わってきません。そしてこの物語の最大の見せ場が存在していません。ダラハイドが自分のなかに存在するドラゴンを消そうとして、象徴していた絵画を食べるシーンです。これで完璧にアウトです!
さらにわたしが原作で最も驚かされたラストが消されていました。死んだと思ったダラハイドとウィルの戦いが、最初の逮捕劇で終わってしまったことです。それもウィルがダラハイドを殺して終わりです。せっかく原作者の盛り込んだ仕掛けが、この映画では完璧に無視されていました。
ウィルの目線で映画を進めたことは成功だと思います。そしてそれをウィリアムが見事に演じきっていました。でもラストの脚本がこれでは、どれだけ名優が演技してもぶち壊しです。あまりヒットしなくて、邦題が迷走した理由がよくわかります。
わたしのように原作に惚れてこの映画を観た人は、ガッカリすることだろうと思います。でも一般的なサスペンス映画だと思って観ると、決して愚作ではありません。どうしても原作と比べてしまうから、そのような感想が出るだけです。
ということで最新版の『レッド・ドラゴン』にとても期待しています。やっぱりレクター博士は、『羊たちの沈黙』のアンソニー・ホプキンスの演技で観たいですからね。この映画のおかげで、リメイク版を観る楽しみが増えました〜〜!
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