SOLA TODAY Vol.205
昨日JR三ノ宮駅に降り立ったとき、平日にもかかわらず人が多いのにたじろいでしまった。
列車が到着して大勢の人が一斉に降車すると、改札口は流れがせき止められた暴れ川のようになり、大勢の人であふれている。当たり前のことだけれど、改札の扉が閉じたり開いたりするのを待たなくてはいけないから。
最近ではアナログな切符より、ICカードを等を使って改札を通過する人が多い。もし扉の開閉がなければ、もっとスムーズに人が流れるだろうなぁと思って見ていた。
外国では実際に、そんな改札の扉を取っ払ってしまった国がある。それはノルウェーのオスロ。
不正乗車はむしろ「放置」したほうが公共交通は便利になる、という例
オスロでは改札口の扉をなくしてしまった。ICカードやスマホを利用したタッチ式の料金払いにすることで、現金を使わないシステムに変更した。バスやトラムでも同じシステムが採用されている。
扉の開閉をなくすことで、乗降にかかる時間が短くなり、列車の運行本数を増やせ、車内の混雑が緩和された。結果的に乗客が増加しているらしい。
そこで問題になるのが不正乗車。扉がないので、その気になれば自由に通過できる。そこでオスロがとった対策は?
それは「放置」することだった。
不正乗車を防ぐためにかけるコストのほうが、不正乗車によるロスよりも負担が増えるとのこと。さらにシステムの利用データを調べると、ほとんどの人がルールに従っていることがわかった。
たまに抜き打ちで行われる検査で不正が見つかると、膨大な額の罰金を課されることも効果があるらしい。
サンフランシスコでも改札機のドアをすべて解放した。これはかなりいい効果を生んでいる。乗降のスピードが早くなっただけでなく、扉の開放以前よりも不正乗車の割合が減っている。
オスロでもサンフランシスコでも、同じ結果が出たというのが面白い。人間を信用しないで扉を作るより、放置するほうが不正乗車が減るなんて……。
ただしそんなに簡単なことではないらしい。実際にICシステムに切り替えて扉をなくすのに、多額の費用が必要となる。さらにロサンゼルスで同じ試みをしたところ、治安維持や犯罪防止の点で継続が不可能になったとのこと。
ある程度、その地域の民度が問われるということかもしれない。でもきちんと行列に並ぶ日本人なら、オスロのようにうまくいくような気がする。
ただ問題になるのは不公平感だと思う。自分がきちんと支払って電車に乗っているのに、不正乗車をしている人を見るといい気はしない。抜き打ちで検査をするとしても、そうした人のすべてが罰金を払うわけじゃないだろう。
鉄道会社としては、乗客を増やして生産性を高めるために有効かもしれない。だけど扉を開放することによる発生する不公平感は、積もり積もると日本人の心象を悪くするような気がする。民族的な意識で考えると、日本人は全体の合理性よりも、他人に対する同調圧力のほうを優先するだろうからね。
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