SOLA TODAY Vol.321
働き方が問われている現代の日本において、なぜ働くか? という理由を真剣に考える時代が来ている。
働く理由としてほとんどの人が即答するのは、「食べるため」というものだろう。まずは衣食住を確保することが優先されるのは当たり前。
だけどもしエネルギーも食料も無料だとしたら、あなたはどんな生き方をするだろうか?
このタイトルにあるように、そうなることを断言している人がいる。そこらにいるオジサンの妄想じゃない。
この記事は「未来の働き方」というテーマで、各国の著名な専門家が集まって実施されたラウンドテーブル(円卓会議)の内容をまとめたもの。日本人も出席しているが、この記事のタイトルの発言をしたのは、カーネギーメロン大学のヴィヴェック・ワファ教授だ。
AIやスーパーコンピューターが一定以上の進化をすると、技術的特異点を超えるという理論がある。シンギュラリティと呼ばれている。人間の想像が及ばない超越的な知性が登場するという仮説で、人類の進化速度が無限大に到達したように見える瞬間のこと。
今はシンギュラリティが起こるかどうかではなく、『いつ』起こるかということが話題の中心になっている。ワファ教授はそのシンギュラリティ研究に関する第一人者とのこと。それだけに説得力がある。
彼の発言をいくつか記事から引用してみよう。
「IBMはWatsonを使うことで、これから5年後にはすべての疾病の診断を、人間よりもうまくできるようになるといっている。人間の身体のなかにセンサーが入り、それによって計測されたデータをAIが収集し、分析して、診断や処方を下すことができるからだ。AIは人間よりもデータの解析がうまくでき、さらに、それをずっと覚えていてくれる。社員が2、3年で次の仕事に移ったり、定年で退職してしまうことで、企業に知識やノウハウが蓄積されずに失われていくという課題をAIはカバーでき、企業の生産性をあげることにつながる」
このことはボクも記事で読んだことがある。このブログでも紹介したけれど、実際にスウェーデンでは人間の身体にチップを埋め込むことが行われている。だから財布を持たずに列車に乗って料金を精算することが可能となっている。
そしてタイトルの内容に関する発言は以下のようなものだった。
「14年以内に無制限のエネルギーが誕生し、エネルギーが無償で提供されるようになる。街には火力発電した電力はいらなくなる。また食料も無料になり、デジタルドクターが登場することで医療も無料になる。さらにデジタルを活用すれば、教育も無料になる」と予測されている。
この発言に関する詳しい裏付けは書かれていないけれど、根拠のないことを発言しているとは思えない。予言者じゃないんだから、自分のキャリアを棒にふるようは発言は控えるはず。だとすると、ちょっとワクワクしてくるよね。
ボクは別の書籍でシンギュラリティに関するものを読んだけれど、これと同じことを予測している人がいた。
ただしこのような状況が社会で実現するためには、それに伴う痛みがあることを忘れてはいけない、とワファ教授は述べている。
例えば自動運転の車が普及することで、大手の自動車メーカーはこれまでの市場の9割を失うことになる。3年以内には完全自動運転車が市販される見込みだからね。さらにデジタル通貨が普及することで銀行員は職を失い、世界中の企業が経済的な危機を迎える可能性がある、とのこと。
そして最も教授が憂いているのは、その危機をアメリカの企業でさえわずか2%くらいしか認知していないこと。日本においては1%を切るだろう。突然に今までの仕組みが成り立たない状況になり、世界中はパニックに陥るかもしれない。そしてそれが絵空事でないと断言できるほど、技術革新はとんでもないスピードで新しいものを生み出している。
エネルギーも食料も無料になり、さらにベーシックインカムが制度化されたなら、ボクたちは「働く」ことに関して意識を転換せざるを得ない。その変化を受け入れるためには、想像を絶するほどの意識改革が必要とされる。だからいつそんな時代が来てもいいように、今のうちから心がまえをしておくべきだろう。この記事を読んでそう思った。
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