SOLA TODAYT Vol.515
新聞の購読をやめて、もう10年目になる。そのことを後悔したことは一度もないし、むしろ良かったと思っている。支出する費用に見合った内容だと思えないようになったから。ネットが普及したことも、新聞から離れる要因になっている。
その傾向はボクだけでなく、大勢の人が同じように感じているらしい。
新聞通信調査会が今年の1月に発表した「メディアに関する意識調査」の結果をまとめた記事。
各メディアに対して信頼感が上昇したか下落したかを尋ねている。その差をDI値というそうで、プラスなら全体としてメディアの信頼が上昇して、マイナスなら下落したということになる。
新聞、NHKテレビ、民法テレビ、ラジオ、雑誌、インターネットの6項目。その結果はどうかと言うと……。
なんとすべてのメディアのDI値が減少していた! メディアがいかに信用を失っているかがわかる。
この記事を読んで面白いと感じたのは、新聞に対して信頼が上昇した人と、下落した人の理由。
上昇した人は、「情報が正確」、「根拠に基づく情報を報道」と述べている。
下落した人は、「特定勢力に偏った報道」、「政府・財界の主張通りに報道するだけ」と答えている。
まったく相容れない、正反対の理由となっている。つまり上昇することと、下落することに対して、相関関係が認められないということ。何らかの要因があって賛成や反対意見が出ているのではなく、答える人の感覚によってちがうということ。
ここから面白いことが見て取れる。
それは、人間は自分の信じることを事実として受け入れる、ということ。
例えば左翼的な思想を持っている人なら、右翼的なメディアを批判するだろうし、信用がないと答えるだろう。逆もまた然り。結局は自分の意見に合うメディアを選んで、そこから情報を集めるようになる。
特にネットが普及したことで、情報収集の範囲が大幅に増えた。だからますます、自分の信条に合うものを支持するようになる。6つのメディアがそろってDI値を下げているのは、そうした事情が左右しているのだと思う。
交通事故の報道だって、やり方によっては偏向的なものになる。ある人は正確な報道だと思うし、別の人はメディアの主張が盛り込まれていると感じるだろう。完璧に客観的な事実だけを伝えているメディアなんて、基本的にないと思うほうがいいのかもしれない。
先ほども書いたけれど、人間は自分の信じることだけを事実だと認める。だからこそ同じ主張を持つメディアに影響されやすくなる。このことは、思っているより恐ろしいことだと思う。別の可能性を否定するようになり、ちがう主張を持つ人ととのあいだに大きな壁を作ってしまう。
戦争というのは、そんな壁が原因であることが多い。
ボクが新聞の購読をやめたのは、そうしたことに対処するという理由もある。一つの新聞に頼っていると、どうしても影響を受けてしまう。できる限りこちらから能動的に動いて情報を集めることで、偏りを極力無くしたいと思っている。
難しいことだと思うけれど、自分とちがう意見を持つ人の主張も知りたい。その視点から考えてみたい。そう思っている。
幸いにもネットがあることで、努力しだいでそれは可能だと思う。自分のなかで中立である部分を、できる限り残しておきたいと願っている。
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