SOLA TODAY Vol.557
アルコールを飲まなくなったよなぁ。おそらく1年で飲む回数は、両手で数えられるほど。
お酒が嫌いなわけじゃないし、親しい人と飲む酒席は大好き。そうした交流の一環として飲むアルコールは別にして、自宅で晩酌しようなんて最近は思わない。
回数が減ることによって、アルコールが弱くなったような気がする。「飲もう!」を思うと、いくらでも飲める。だけど普通に飲んでいたら、350ccの缶ビールが精一杯。シャンパンなんて、グラスに2杯も飲めば酔ってしまう。
中学校の修学旅行中の夜、友人と二人でウイスキーの大瓶を飲み干した同じ人間だとは思えない。人生で最高に飲んだのは、10代と20代だろう。それに比例するように、お酒での失敗も数えきれないほどある。
そんなボクがお酒を飲まなくなったのは、もしかしたら人類の進化に適合しているのかもしれない。
人類は進化によってお酒に弱くなる。今後アルコール耐性を持たない人が急増する可能性がゲノム解析で明らかに
日本人を含めた東アジアの人たちは、欧米の人に比べるとお酒を飲めない人が多い。アルコールを摂取すると、アセトアルデヒドという毒物に分解する。それによって顔が赤くなったり、気分が悪くなる。
ところが代謝によってアセテートという毒物の低い物質に変換して、体外に排出される。東アジアの人は、このアセテートに変換することを妨げる遺伝的特質を持つ人が多い。だから気分の悪さが続いて、お酒が飲めないということになる。
ペンシルベニア医学大学院の准教授たちの研究によると、どうやら人間の進化の方向性が、アセテートに変換するのを阻害する方向に進んでいるらしい。4大陸26集団の、2500名以上のゲノム配列を調査した結果でわかった。
お酒が飲めないということは、アルコール依存症にならないということでもある。人類という種は、アルコールと決別することを選択したのかもしれないね。だから生まれつきお酒を飲めない人や、お酒が弱くなった人は、進化の最先端にいるのかもしれない。
つまりアルコールが人類に与えてきたものは、未来の人類に必要ないということだろう。アルコールが楽しみを提供してくれるのは事実。一緒にお酒を飲むことで、他人と分かり合えることも多い。
その一方で、ストレス解消でお酒に走る人もある。昼間の生活で我慢に我慢を重ね、言いたいことを抑えて、生活のためにやりたいことも諦める。そんな生き方をしていると、お酒でも飲まないとやっていけないだろう。でもその先に待っているのは、アルコール依存症という悲劇でしかない。
ボクの勝手な想像だけれど、これからの人類はそうしたストレスを抱える必要がないのだろう。人類の未来は、本当にやりたいことをやっていける世界なのかもしれない。だからアルコールを分解する遺伝子は必要ないのかもね。
だけど正反対のうがった見方もできる。人類の未来は暗澹たるもので、アルコールなしではやっていけないのかもしれない。ゆえにお酒を飲める人は、必然的にアルコール依存症になってしまう。だからそうした悲劇を防ぐために、遺伝子を改造しているのかも。
さて、どちらの未来が待っているのか? きっとDNAは知っているんだろうね。
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