法律の抜け穴をふさぐ方法
税理士事務所で働いていたときに感じたことがある。それは法律なんて抜け穴だらけだということ。
何度も検討を重ねて、矛盾のないように精査されたうえで法律は公布されているはず。それでも人間の作ったものだから、すぐには見えない穴がある。
そのうえ税法に関していえば、やたら改正が多い。古いものが消えたり、新しいものが増えたり、国税庁が発表する通達まで含めると、多過ぎてわけがわからなくなる。だから大きな抜け穴があっても、誰も気づかないことが多い。
そのあたりが税理士の働きどころでもある。この方法なら合法的に節税できますよ、というアドバイスができるから。法律というのは公平であることが原則なのに、こんなことでは困るよね。
だけど立法者が気づいてくれないと、法律の改正は進まない。でも普通に指摘してもあまり真剣に取り合ってもらえない。
ということで、こんなことをしでかした人がいる。
2〜3日前にこのニュースが報道されていて、見出しを見たときにどういうことなのかわからなかった。それでじっくり記事を読んで、なるほどなぁと感心してしまった。
東京の日の出町というところで、今月の25日に町議会議員選挙があった。当初は14人の定数に14人の立候補。いわゆる出来レース状態だった。ところがある男性が立候補したことで15人になり、選挙が実施された。
ところが選挙戦が始まってすぐ、あとから立候補した男性がこの街の住人でないことを自ら公表した。つまり被選挙権がないということ。選管は大あわてになり、開票日直前になってこの男性の投票を無効票にすることに決めた。
選挙がなければ900万円で済んだけれど、選挙を実施したことで追加の400万円を支出することになってしまった。日の出町の選管の発表によると、『公職選挙法では、立候補の届け出の書類が形式的に整っていれば、住所要件で却下することはできないということで、法律に従って開票作業の直前に無効票として扱う対応を決めた』とのこと。
立候補した男性の主張はシンプル。「現在の選挙制度に疑問があるため」
もちろんこれはほめられたことじゃない。余分に税金を使っているんだからね。ただ法的には立候補できるわけだから、法律違反ではない。結果として議員になれないというだけ。それなら最初から立候補できないような法律にすればいいのに、そうなっていないということ。
このニュースを見たとき、ボクはこの男性を責める気持ちになれなかった。ここまでしないと、行政サイドは法律の抜け目を実感しないだろうから。いつまでもザルのように水が漏れ続ける。それに定員きっちりの立候補を阻止したことも、どことなく痛快だった。
これと同じことをコンピュータのハッカーがよくやる。システムの脆弱を証明するため、あえて公的機関のコンピュータに侵入する。そこまでしないと、セキリュティの甘さを理解しないからだろう。
日の出町にしたら迷惑な話だけれど、ボクとしてはこの男性を支持したい気持ちになった。
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