戦争の概念は急変している
戦争という言葉に対して、どのようなイメージが頭に浮かぶだろうか?
高齢者の人たちは第二次世界大戦、やや下の世代になるとベトナム戦争、さらに若くなると湾岸戦争の映像が頭に浮かぶかもしれない。
使用する兵器は時代によってちがうだろうけれど、大勢の兵士が海や空から陸地へと進軍していく様子が頭に浮かぶのは同じ。おそらく世界の軍隊においても、そのイメージに準じた訓練がいまも行われていると思う。
だけど最先端で戦争をシミュレーションしている軍人たちは、まったくちがう世界をイメージしている可能性がある。そこには兵士の姿が見られないかも。
少し前の映画で『ドローン・オブ・ウォー』という作品があった。アメリカ軍によって、アフガニスタンにあるタリバンの拠点が攻撃されるという内容。だけどイーサン・ホークが演じている主人公の居場所は、アメリカはラスベガスの基地。そこから無人のドローンを操縦することで攻撃を行なっていた。
ある意味テレビゲームの感覚で人を殺してしまう。自分は絶対に安全な場所にいて他人の命を奪う。そんな異常な状態に耐えきれず、やがて主人公の精神が病んでいくという物語だった。これは決してドラマだけの世界ではなく、現実に起きていること。
そしてそうした戦争のやり方は、さらに先へと進みつつある。
AIと現役空軍パイロットがフライトシュミレーターで空中線。 AIが人間を撃破
タイトルだけで内容がわかる記事。実際にこんな結果が出ている。アメリカである催しが行われた。主催したのは米国防高等研究計画局というアメリカ国防省の機関。仮想空間における戦闘機のシミュレーションバトルが開催された。
参加したのはロッキード・マーティン社やボーイング社といった名だたる軍需企業や、ジョージア工科大学といった名門校からの計8チームとのこと。そして優勝したAIチームと現役の空軍パイロットが対戦することになった。
その結果はAIの圧勝。現役のパイロットはAIからの攻撃回避が精一杯で、数回のバトルですべて完全に撃墜されている。これまでアメリカの空軍は戦闘機にAIを搭載することに否定的だったけれど、この結果を受けて導入が本格化するとのこと。なぜなら敵の攻撃に対するAIの反応速度が、人間とは比較できないほど速いから。
そのうちパイロットのいない自動操縦の戦闘機が、AIの制御によって出撃することが可能になるだろう。人間がこれまで抱いてきた戦争に対するイメージは、明らかに急変している。
現代において過去のような世界大戦は起きないと思う。なぜなら核兵器が地球をくまなく埋め尽くしているから。だけど外国に内政干渉を許さない内戦や、国境をはさんだ局地的な紛争は、いつどこで起きても不思議ではない。そんなとき、ドローンやAI搭載の戦闘機が使用されるかもしれない。
つまり罪悪感を覚えることなく、冷徹なマシーンが人間を殺戮する可能性が増えている。内戦であれ局地的な紛争であれ、命を落とすのは一般人であり、その多くが難民となって母国から逃げなくてはいけない。
むしろ戦争の概念が急変したことによって、そういうことが起きやすいような気もする。これは日本を含む東アジアにおいても、決して人ごとじゃないと思う。
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