尋ね人がマドンナだった
いやいや、ホッとしたよ。やっぱりそうでなくっちゃ。
何かと言えば、あるシリーズ小説の主人公のこと。人が変わったようになって心配していたけれど、最後になっていつもの姿を見られて安心した。
2022年 読書#27
『ミッドナイト・ライン』下巻 リー・チャイルド著という本。上巻の感想については、『いったい彼に何があった?』という記事に書いているので参照を。
その主人公とは映画にもなった『ジャック・リーチャー』シリーズのジャック。元陸軍の憲兵、つまり捜査官で、退役した後は定住地を持たず全米を放浪している。ところが行く先で犯罪に巻き込まれ、数々の難事件を解決してきた。死にそうになったことだってある。
そんなジャックの物語に欠かせないのが、毎回登場するマドンナ。たいていはその作品だけで終わる関係で、ボクがいつも例に出すのは『男はつらいよ』の寅さん。このパターンがあるからこそ、ファンはシリーズ作品を楽しむことができる。
ところが今回の作品はいつもとちがう。まず事件に巻き込まれない。ある質屋でジャックと同じ士官学校出身者の指輪を見て、その人物に何があったのか気になった。どうやら女性らしい。単なる好奇心だけど、その指輪を持ち主に返そうと思った。つまり自分から事件に飛び込んでいる。
さらにマドンナがいない。それどころかこの2回前の作品(邦訳されていない)で同棲相手がいたという設定になっている。女性に逃げられたことで、仕方なく放浪していた。そして上巻ではその女性のことばかり思い出している。おいおい、いつものジャックはどうしたんだよ?
でも下巻を読んで安心した。指輪の女性はローズという名で、アフガニスタンで戦闘に巻き込まれ、恐ろしい傷を顔に負った。誰もが立ち止まって二度見するほどの美人だったローズは、まだ30代なのに化け物のような顔になってしまった。その痛みは強烈で、鎮静剤なしでは生きていけない。
それでヘロイン中毒になっていたローズは、指輪を売るしか薬を得る方法がなかった。彼女には双子の妹がいて、連絡の取れなくなった姉の捜索を元FBIの私立探偵に依頼していた。ということで、ジャックはローズの妹、そして私立探偵と協力することでローズを見つける。
でもそれからが大変だった。彼女を治療するためには、2週間ほどの期間が必要。だけど違法な薬物が手に入らないと、彼女は生きていられない。さらにその薬物には軍のある将軍と、街のチンピラが関わっていた。ようやくジャックの活躍する場ができたということ。
結論から言えば、ジャックは麻薬組織の陰謀を暴き、罪を受けるべき将軍を失脚させる。さらにジャックたちは麻薬の運び屋から大量の薬物を強奪したことで、治療を受けるまでのローズに必要なヘロインを手にする。正義のためには強盗までするのがジャックのユニークなところ。でもそれが犯人逮捕につながった。
そしてジャックとローズは一夜限りの関係に。ローズがどれほどの美人なのかは、一卵性双生児の妹でわかる。だけどローズの顔はその面影もない。だけどジャックは彼女の瞳にその美しさを見ていた。そのジャックの気持ちにローズは応えたというベッドインだった。もちろん、二人はそれで終わりだけれどね。
再びジャックは一人になって旅に出るシーンで終わる。やれやれ、いつものジャックが健在でホッとした。だけどこのあとの作品は邦訳されていない。思い出したようにときどき翻訳本が出版されるから、頻繁にチェックするしかジャックに会う方法はなさそうだね。
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