狂っていると自覚させる方法
最近はまったく見ていないけれど、『モニタリング』というテレビ番組がある。今もやっているのかどうか知らないけれど。
いわゆる「ドッキリ」系の内容で、ターゲットを騙すのが主旨。それなりに笑える内容がほとんどだけれど、まれに怖いなぁと感じることがあった。明らかに事実と異なることなのに、周囲の人が口をそろえて別の事実を言い張る。もちろん口裏を合わせてのこと。
人間てああなってくると、何が事実なのかわからなくなってくる。その内容があまりに真に迫っていると、もしかしたら自分は狂っているのでは?と思いかねない。テレビ番組なので無茶はしていないだろうけれど、「こんなことして大丈夫?」と本気で心配することがあった。
ある映画で使われている手法も同じだった。主人公に自分は狂っていると自覚させるように仕向けている。幽霊がからんでくるオカルト作品なんだけれど、幽霊よりも生きている人間の方が恐ろしいという内容だった。
2023年 映画#91
『ゴースト・ライト』(原題:Half Light)という2006年のアメリカ映画。主演はデミ・ムーアで、17年ほど前の作品。まだ彼女も若く、大人の女性の魅力に惹きつけられた。このころのデミ・ムーアは本当に綺麗。
デミ・ムーアが演じるのは著名な作家。かなりの売れっ子で、資産家でもある。夫は編集者でかつ作家でもある。ところが妻に比べて夫は作家として認められていない。妻の才能を嫉妬している気配があって、後半への伏線となっている。
主人公に不幸な事故が起きる。彼女の不注意で、まだ幼い子供が溺死してしまった。それが原因で夫ともうまくいかなくなり、執筆をするために海岸沿いの空き家を借りて一人で暮らすことになった。海を渡った島には灯台がある。
その灯台のある島で、主人公は灯台守の男性と知り合い恋に落ちる。ところが村の人は彼女の話を聞いて驚く。なぜならその男性は7年前に自殺して死んでいたから。妻の不倫を知り、不倫相手と妻を殺して自殺していた。つまり主人公は幽霊と恋に落ちていたことになる。
この家へ引っ越す前から、彼女は精神科の治療を受けていた。息子を死なせた罪悪感に耐えられなかったから。時おり、息子の幽霊らしき姿も見てしまう。もしかしたら自分は狂ったのでは? 密かにそう思っていたところに、この灯台守の出来事が起きた。彼女は完全に混乱してしまう。
ここで種明かしをすると、その灯台守は夫が雇った人間だった。その村での事件を知っていて、妻の親友である愛人と手を組んだ陰謀だった。最終的には妻を自殺に見せかけて殺し、多額の財産を自分のものにすることが目的。
だけどオカルト作品でもあるこの映画。最終的に彼女を救ったのは息子の幽霊だったというオチ。単なるミステリだけではなく、ホラー作品としても見応えのある内容だった。当然ながら夫と愛人、さらに幽霊役の男性は報いを受けることになったけれどね。
とにかく人を意図的に混乱させ、狂っていると自覚させるのは意外に簡単なのかもしれない。やはりお笑い系のテレビ番組でも、人を騙すということは控えるべきだと思うなぁ。
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