SOLA TODAY Vol.354
梅雨から夏にかけて注意するべきなのが食中毒。ところが季節に関係なく、除菌という文字をよく見かける。
除菌や抗菌という言葉が頻繁に使われることによって、かえってボクたちは菌の存在を意識するのではないだろうか?
特に台所は菌の温床にように言われ、最近の台所洗剤はほとんどが除菌効果をうたっている。そんな台所の菌に関する記事を読んだ。
台所用のスポンジが菌まみれでも大丈夫な理由「菌と人間は共存関係」
アメリカの複数のメディアが8月の上旬に、台所のスポンジは頻繁に交換するべきだという調査結果を報告している。ところがその調査に疑問を持った研究者が、本当にそうなのかを調べた記事。
メディアで報告されている調査では、14個のスポンジを使って菌の状態を観察している。その菌の中には消毒をしても生き延びるものがあり、簡単に再繁殖するらしい。だからスポンジは頻繁に交換するべきだという意見になる。
だがそれは本当に有害な菌なのだろうか?
疑問を持った研究者が調べてみると、そのほどんとが人間の皮膚に常在している菌で、食中毒を起こすような有害なものではない。つまりよほど激しい殺菌剤に手をつけるようなことでもなければ、普段から一緒に暮らしている菌だということ。
だから深刻な免疫障害を持っているような人でない限り、それほど深刻に悩むようなことではないと結論している。菌の存在を過剰に意識すると、出口のないトンネルに入ったのと同じ。人間という生き物は、清潔に暮らしている人でも菌にまみれているのが普通だから。無菌状態の人なんてありえない。
例えば携帯電話なんて、細菌の数だけで言えばトイレの便座の10倍ほどらしい。ボクたちが普段持ち歩くようなバッグ等にも大量の菌がついているし、スーパーで買う野菜や果物にも菌が付着している。もし菌が目に見えたとしたら、どんな人でも卒倒してしまうのではないだろうか?
だけどその菌のほとんどは、水で洗い流せるもの。だから普通に手洗いをして、清潔に保っていればまったく問題ない。台所のスポンジだって普通に使っている分には大丈夫。しっかり水で洗って乾燥させ、定期的に交換すれば問題ない。
でもCMや商品で除菌や抗菌という文字ばかり見せられると、どうしても過剰に反応してしまう。「ゼロリスク」なんてありえないのに、声高にそのことを叫ぶ人が出てくる。そもそも菌が人間にとって必要不可欠であることを忘れているんだろうね。
腸内細菌は人間の健康にとって欠かせない。あるいはある程度の細菌に囲まれて暮らすことで、逆に免疫力が高まり、アレルギーや喘息の症状が改善されたという医療報告もある。菌と共存することで、ボクたちはうまく肉体のバランスをとっているのだろう。
これはある意味、人間関係についても言えるような気がする。いい人悪い人を含めて、いろんな人間がいるからボクたちは何かを学ぶ。清濁併せ吞むということは、ある程度必要だと思うんだよね。
ただし無理は禁物。台所のスポンジも人間関係も、自分なりのバランス感覚を維持することが必要。スポンジを放っておけば食中毒を起こす菌が繁殖するし、他人との関係も無理をすると多大なストレスを持つことになる。
「ゼロリスク」はありえないけれど、自分を守る術は身につけておくべきなのだろうね。
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