今日のウィルバーくん 2.5
理科系人間だったウィルバーが老子の言葉に出会い、意識の世界への扉を開きます。そこで瞑想を経験するようになりますが、どうしてもある壁にぶつかりました。それは、微細（サトル）レベルとウィルバーが呼んでいる領域への移行を阻む壁です。
瞑想はあくまでも私的体験ですから、他人と自分は違います。他人の体験を鵜呑みにするのは危険です。けれども、どういうことで悩んでいて、そこからどのようにして抜け出たのか。これを知ることは、決して無駄ではないはずです。そんなウイルバーの体験を見てみましょう。今日はその壁についてです。
〜以下抜粋。
『無境界』を書き終わった頃までには、ぼくの瞑想の修行は、もはや初心者の段階を終わっていた（かといって、上級者とも言えなかったが）。蓮華座からくる足の痛みは、なんとかコントロールできるまでになっていたし、意識はリラックスしながらも集中し、能動的でありながらも、いろいろな心的現象から離脱した状態を保てるようになっていた。
しかし、ぼくの心は、よく仏教徒が言うように、まるで木から木へ飛び移る猿のようであって。強迫的なまでに活発に動き回っていたのである。ぼくは、ここで自分自身「アポロ・コンプレックス」に直面していたのである。すなわち心的な領域から微細（サトル）な領域へ変容するさいの困難に。
キリスト教神秘家が使う言葉で言えば「魂」（ソウル）と呼ばれるこの領域は、個を超えた領域（トランスパーソナル）の始まりでもあって、そうしたものとして、それはまず超──心的（トランスメンタル）、超──自我的（トランスエゴイック）、超──言語的な領域である。
しかしその領域へ到達するためには、ほかのすべての変容と同じように、人は、低位の領域を「死ぬ」必要がある。この場合で言えば、心的・自我的な領域を。これに失敗するのが、あるいはそうできないことが「アポロ・コンプレックス」である。
〜以上抜粋。ケン・ウィルバー著『無関門』より。
トランスパーソナルな領域に移行しようとすれば、どうしても「アポロ・コンプレックス」を克服する必要がある。ウィルバーはそう言っています。そして彼自身、そのことで苦労した様子が書かれています。
「アポロ・コンプレックス」とは書かれているように、心的な領域から微細な領域へ変容するさいの障害となるものです。心的・自我的な領域を「死ぬ」ことができない。つまり自我が脱落することなく、本当の自分と同一化している状態です。
瞑想を始めると、ウィルバーが書いている程度までは比較的容易に達することができます。私の経験から言ってもそうです。でもそこからが難しい。
木から木へ飛び移る猿。まさにそのとおりです。心が自由気ままに動き回ることに翻弄されます。気になって仕方ありません。そのうち過去の後悔や未来への不安で心が満たされます。今、ここを離れることで、自我の世界に取り込まれてしまうわけです。それこそが「アポロ・コンプレックス」ですね。
ではどのようにしてウィルバーはこの壁を超えたのか。そして微細（サトル）な領域とはどのようなものか。それは明日以降見ていくつもりです。
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