SOLA T0DAY Vol.61
「老い」という現象において、肉体面と精神面は同時進行するものなのでしょうか？ 80歳や90歳代になると、どれだけアンチエイジングをやっていたとしても、肉体的に枯れていくことは避けられないと思います。ところが精神面の「老い」というものは、その人の心しだいではないでしょうか？ そう感じさせてもらえるドキュメント番組を見ました。
にっぽん紀行「ばあちゃんたちのトチの里～京都 綾部・古屋集落～」
初回放送は10月10日だったようですが、たまたま昨日の再放送を見つけました。番組紹介は以下のようになっています。
『京都府北部の山里に住民わずか４人の限界集落がある。先祖が大切に守り継いだ樹齢数百年のトチの木の実を使って「おかき」や「あられ」などの特産品作りを続けている３人のおばあちゃん。自ら販売に出向き売り子もこなす。毎朝バイクで作業所に通勤し夕方４時まで年中休まず働く。この秋向き合った新商品の開発現場に密着。働く意味とは？ふるさとに寄せる思いとは？平均年齢８９歳のおばあちゃんたちの物語』
京都ということもあって、タイトルを見て気になりました。でも番組を見る前は、少し腰の曲がった年配の女性が登場するイメージを持っていました。ところがそんな想像が失礼だったと反省するほど、若々しい女性たちです。
集落では３人の女性と、そのうちの一人の60代の息子さんと４人で暮らしています。女性３人が主にお菓子を作り、男性が「道の駅」等に納品されています。朝８時に公民館へ集合して、夕方の４時まで仕事です。86歳、89歳、93歳という年齢をまったく感じさせない働きぶりです。急勾配がある山に入って、小川を飛び越え、栃の実を採取されています。そして各自の分担を決めて、黙々とお菓子を製造されています。
当然ながら給料も支給されていますし、今年の夏には賞与を渡されているシーンがテレビで放映されていました。３人とも嬉しそうで、日々現役で働いている若い世代とちっとも変わりません。身体はきついと言いながらも、女性たちにとって毎日のお菓子作りが生きがいであることがよくわかりました。
興味深かったのは、新商品の開発です。集落の唯一の男性である息子さんが、年間を通じて売ることができる栃の実を使ったクッキーを作ってはどうかと３人に提案しました。ところが２人は反対です。これ以上新しいお菓子を作る余裕なんてない、という返答でした。
ところが１人だけ賛成した方がいます。なぜかと言いますと、今までのお菓子作りで、自分の担当となる商品がないゆえでした。他の２人と同じように、自分が責任を持てる商品を作りたい。その想いでクッキーを試作することになりました。
ところが慣れないクッキー作りです。なかなかうまくいかず、息子さんからはダメ出しばかりです。それでもくじけることなく、何度も何度もトライされます。そうしてこれだ、というクッキーを完成されました。それを見本市で売り出すと、あっという間にソールドアウトになり、新商品として売り出すことが決定しました。クッキーを作った女性の嬉しそうな顔が忘れられません。
90歳になろうとする人であっても、同僚に対してライバル意識を持ったり、全力で努力を重ねて何かを成し遂げるパワーが存在することに驚きました。そして感動しました。年齢を重ねれば肉体は「老い」を経験するでしょう。でも精神の「老い」は自分しだいです。
たとえ20代であっても、精神が「老い」を経験している人がいるように思います。自分自身に限界を設けて、もうダメだと思った時点で精神は「老いて」いくのでしょう。いくつになっても足を止めることがなければ、精神は「老いる」ことはない。この番組をみてそう確信させてもらえました。
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