SOLA TODAY Vol.74
人生において、経験こそが宝物だと思います。どれだけ多くの本を読んでも、大勢の人の話を聞いても、所詮は疑似体験です。実際に自分が経験することに勝るものはありません。
この記事でインタビューに答えているSさんは、50代のシャープ元社員です。本社の統括部長として、経営危機に陥ったシャープ社員の3割をリストラする立場でした。 その後、台湾の会社による買収が決まった時、Sさんは必要な人間としてシャープに残留するよう要請されていました。
ところが他の50代の部長はすべて会社を去りました。 Sさんもこれからのシャープは40代の人間が牽引していくべきだと判断して、誘いを断って退職されました。経営が傾いたとはいえ、シャープという大企業のエリートだったSさんですが、50代という年齢での転職を経験して、大きな壁に直面します。その際に感じたことを若い世代に伝えたいとして、この記事で思いを述べておられます。
シャープがなぜあのような状態に陥ったかについて、管理職としての立場からの見解を語られています。高いコストがかかる液晶一本に絞ってしまい、視野狭窄に陥ったのが大きな理由だったそうです。もし液晶の操業度が落ちれば、一気に損益分岐点を下回り、一瞬で数百億円単位の赤字が出ることを幹部は知っていました。でもそれでも「液晶一本」という方針を変えることができませんでした。Sさんの言葉を見てみましょう。
『それでも「テレビはお茶の間の王様だ」「液晶で世界シェアNo.1を取る」という掛け声は微動だにしなかった。一貫生産をしていなかったブラウン管テレビの時代に部品メーカーから供給を止められて苦汁をなめた体験や、プラズマに勝つのだというデバイスメーカーとしての執念、液晶テレビで世界シェア10%近くまで到達した成功体験、シャープというブランドを付けた商品で10兆円、20兆円を達成したいという野望、そして「キングギドラ経営」といわれた会長ほかトップ3によるかじ取りの混乱――』
この内部告発のような意見から想像すれば、シャープが経営危機に陥ったのは当然のように思えてきます。誰もが疑問を感じていても、それを修正する「空気」ではなかったということでしょう。そのようなシャープでの経験、さらに苦労した転職活動を通じて、Sさんは「後悔しない働き方」を3つあげられています。
「本当にそれでいいのか?を3回繰り返せ。なぜそう考えるのか、どう動くべきなのか、自分自身を疑って徹底的に答えを出せ」
「視野を広く、時間軸を長く、思考を深く持ち続けること」
「そしてもう一つ重要なのが、自分の人脈を大切にすること。転職活動をしてみてわかりましたが、最初はただ、自分の職務経歴を書き並べているだけだった。それがわかったことも大きな学びになりました。経歴の裏側にある、多様な人との関係が、最後の最後は自分の道を切り開く助けになることを学びました」
最初の言葉はSさんが経営企画に配属された時、いつも会社のトップから聞かされた言葉だそうです。これは職種を問わず、意識するべきことだと思います。言われたからやるのではなく、自分のアタマで考える。何よりも大切なことですね。
二つ目はシャープの衰退を経験したから言えることだと思います。会社の内部にいると、どうしても社内政治の思惑に影響されてしまい、市場に対して冷静な判断ができなくなってしまいます。
最後の言葉も心に響きます。自分の道を切り開くのは最終的に人間関係だと、わたしも思います。でも「人脈」という言葉は嫌いです。自己の欲望を充足させるために、意図的に作った人間関係を想起させるからです。Sさんが言われているのは、人間と人間として真剣に向き合ってきた結果としての関係だと思います。これから社会人になろうとする世代の人たちに、ぜひ読んでもらいたいと感じた記事でした。
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