いつの時代も女性の嫉妬は怖い
世界史や日本史に残るような変や乱を戦うのは、たいていが男の兵士や武士。だけどその事変の背後に、女性の嫉妬がからんでいたというのは、日本でも外国でも見られるはず。もちろん男も嫉妬するけれど、女性の嫉妬はドラマになりやすいのかもしれない。
ボクは『風と共に去りぬ』の影響で、アメリカの南北戦争時代における南部の女性に関心を持っている。男たちの多くが戦争に駆り出されてるなか、必死になって家族や農場を守ろうとしていた。北軍が来れば物資が奪われ、女性はレイプされるという恐怖もあった。いや、味方の南軍でさえ食糧等を根こそぎ取り上げたという事実もある。
そんな南部の女性たちを描いた映画を観た。いわゆるスリラー作品で、男性にとっては怖い内容かもしれないwww
『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』という2017年のアメリカ映画。ボクの大好きなソフィア・コッポラ監督の作品で、彼女らしい独自の視点で描かれた素晴らしい映画だった。ソフィア映画のファンじゃない人には、合わない作品かもしれないけれど。
舞台は南北戦争が起きて3年が経過した1864年。バージニア州の人里離れた森に、女性用の学校があった。戦争で行き場を失ってしまった女性たちが集まり、その学校で暮らしながら学んでいた。
校長はニコール・キッドマン演じるマーサ、教師はキルスティン・ダンスト演じるエドウィナ、そして生徒はエル・ファニング演じるアリシアという年ごろの女性を筆頭に少女を含めた5人。
ある日、生徒の一人が森で負傷した北軍の兵士を発見する。コリン・ファレル演じるジョンで、命の危機を校長のマーサの治療によって救われる。最初は警戒していた7人の女性たち。だけど敵のはずのジョンは好人物。男性との生活が久しぶりの7人はどこか浮き足立っていった。
マーサは南軍の兵士たちに通報せず、傷が完治すれば祖国に戻ればいいとジョンに伝える。ところがジョンはこの学校での生活が気に入り、庭師として雇ってもらえることを望んだ。そのために誰とも優しく接したことで、7人の女性がそれなりに彼に対して好意を抱く。
なかでも教師のエドウィナは婚期を逃したこともあって真剣だった。そしてある日、彼の訪問を受け入れようとする。ところが自分の部屋に来るはずのジョンは、生徒のアリシアと関係を持とうとしていた。逆上したエドウィナはジョンを階段から突き落とし、重傷を負わせてしまう。
ジョンの命を助けるには足を切断するしかなく、マーサは手術を行う。ところが足がなくなったことを知ったジョンは逆上する。急に乱暴になり女性たちを恐怖に陥れる。もう彼には学校を出て行ってもらうしかない。そのことを7人が決めようとしたとき、真剣だったエドウィナがジョンと肉体関係を持ってしまう。
当然ながら残る6人は嫉妬する。大人のマーサはもちろん、もう少しで関係を持つはずだったアリシアや、父親のように慕っていたジョンを奪われたように感じる少女もいた。ということで6人はあることを決断する。
暴れたことを反省したジョンは、関係を持ったエドウィナと西部へ行くことを告げる。そしてその歓送会で6人は示し合わせ、ジョンを毒殺してしまう。彼をエドウィナひとりのものにすることを、誰もが嫌った結果だろう。めちゃ怖いし〜〜〜!
そしてラストシーンは、ジョンの遺体を布に包んで学校の敷地外に放置するところで終わる。負傷してその敷地に入ったジョンは、死体となって敷地を出ることになった。一緒に出ようとしていたエドウィナもその事実を受け入れ、他の6人と一緒に彼の遺体を見送る。
なんとも言えないラストだけど、ボクはこの映画が好きだなぁ。ソフィア・コッポラの世界観は、理屈を超えたものがあるような気がする。この感覚が彼女の魅力なんだろうなぁ。
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