台湾パインが示唆するもの
今月に入ってすぐ、緊迫した様子で台湾の蔡英文総統がツイートした。台湾産のパイナップルのほぼ全てを輸入していた中国が、輸入の全面的な中止を発表した。ほぼ不意打ちのようなゲリラ的発表。理由は害虫が発見されたということだけれど、嫌がらせなのは明らか。
ところが蔡英文総統のツイートをきっかけにして、想像を超える奇跡が起きた。
台湾のパイナップルは年間で41〜43万トン産出され、そのうちの10%に当たる4万トンほどが輸出されている。そのほとんどが中国。それゆえ一方的な輸出禁止は台湾のパイナップル農家にとって絶望でしかない。
ところが総統の呼びかけによって近隣諸国が手を差し伸べた。中国政府の通知から96時間後には、なんと4万1687トンのパイナップルが売れた。これは昨年の中国への輸出量を上回っているとのこと。鮮やかな逆転劇だった。
もっとも早く反応したのは日本。台湾と友好関係のある日本にとって、中国の嫌がらせは無視できない。ネットでも台湾産パイナップルを購入しようという動きが高まり、前年より60%増の輸入となったらしい。すごいよね。
こうした貿易圧力は中国の常套手段。アジアで中国と対立している国としてオーストラリアがある。かつてオーストラリア産のワインに対して、中国政府は不当な輸入制限をしたことがある。そのときオーストラリアを支援したのは台湾だった。中国にすれば、その意思返しだったのかも。
今回の件で日本が協力できたことは、素直にうれしい。だけどこの騒動は、見過ごすことのできない問題点を明らかにしている。
それは特定の国へ一極集中することのリスク。台湾のパイナップルに関していえば、全面的に中国への輸出に依存していた。つまり切り札を中国に握られていることになる。こうなる前にリスクヘッジを考慮して、輸出先を分散させるべきだったんだと思う。
中国の戦略として、貿易や労働力の提供によって関係国に依存させるというパターンをとっている。だから気がついたとき、依存している国は中国の機嫌を伺う必要が出てくる。そうなったら相手の思う壺。
これは中国に限ったことではない。日本だってアメリカに依存している。特に国防ということに関して。
もしアメリカ軍が日本から撤退したら、いまの日本では自国を守ることができない。もしそうなったとしても、国防はパイナップルとはちがう。そう簡単に近隣諸国が助けてくれることはない。要するに日本はアメリカに弱みを握られているのと同じ。
台湾のパイナップルが示唆することは思った以上に深い。国益を守るためには、一極集中を避けてリスク分散することは必須だろう。アメリカと友好関係を維持しつつ、自立する道を常に模索していくべきだと思う。
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