無駄がない主人公と著者
自分では完璧を期しているつもりでも、どうにもうまくいかないのが人間。細心の注意を払っていても、どこか抜けたり忘れたりミスったりするもの。ましてや年齢を重ねてくると、自分に対してため息しか出てこないwww
だからここ最近に意識しているのは、思いついたことはすぐやるということ。あとでやろうなんて思って放置すると、ほぼ確実に忘れている。だからすぐに手をつけられないことは、絶対に思い出すような処置をとっておくべきだと痛感している。
ところがある小説の主人公は、すべてにおいて無駄がなく完璧。そしてそれが当然であるかのようなキャラ設定がなされている。だから主人公に本気で惚れ込んでしまう。なぜそれほどその主人公に無駄がないのか、最後まで読了してわかった。
それは著者の創作に無駄がなくて完璧だから。
2021年 読書#23
『反撃』下巻 リー・チャイルド著という小説。上巻の感想については『シリーズに必須のパターン化』という記事に書いているので参照を。
トム・クルーズ主演で知られている『ジャック・リーチャー』シリーズの原作。この作品は第2弾で、映画化された物語よりずっと前の作品となっている。
何度も書いているけれど、映画のジャックとキャラがかなりちがう。もちろんトム・クルーズのジャックも素敵なんだけれど、原作のジャックはもっとかっこよくてすごい。最初に書いたとおり、とにかく何をやらしても完璧で無駄がない。
上巻ではモリーというFBIの女性捜査官が誘拐され、たまたまその場に居合わせたジャックも拉致された。二人を拉致したのはモンタナを拠点とする民兵組織で、アメリカ合衆国からの独立を目的としている。
モリーはアメリカ軍の最高責任者の娘というだけではなく、彼女の名付け親が現職大統領。それゆえ人質として価値が高い。FBIと軍隊が協力して必死でモリーの行方を探すが、状況がつかめないというところまでが上巻。
この下巻は、ジャックとモリーの活躍が中心。結論からいえば、絶体絶命の状況から民兵組織を壊滅させる。それゆえ『反撃』というタイトルがつけられたのだろう。今回はシリーズの第2弾となるので、ジャックの優れた能力の紹介が中心となったような物語だった。
第1弾はジャックの一人称で書かれていた。今回は三人称だけれど、前回と同じくジャックの思考や心情が詳細に書かれている。例えば敵をライフルで撃つ場合も、銃の性能、銃弾の重さ、空気抵抗による摩擦、相手の動き、風や重力まで計算して引き金を引く。こうした詳細な描写で多くの場面が構成されている。
おかげで読んでいるボクまで銃の性能に詳しくなってしまった。著者が多大な時間をかけて取材をしていることがわかる。超人的な活躍を見せるジャックには、それだけの理由があるということ。ボクはこの第2弾を読み終えて、完璧なジャックオタクになってしまった。
ちなみにジャックは『男はつらいよ』の寅さんと同じなので、モリーとはいい関係になっても結ばれない。ジャックと組んで死闘を繰り広げたFBI捜査官のマグラスという男性とモリーは結婚することになる。そして再びジャックは旅に出るというラスト。
この小説を読んで感銘を受けたのは、最初にも書いたように著者の無駄のない構成。物語の前半から中盤に散りばめれられた伏線が、ラストで見事に回収されている。そこにはまったく無駄がなく、何気ない風景描写にも伏線が仕込まれていたりする。例えば工場に転がっていた塗料の空き缶とか。
ジャックというキャラに無駄がないのは、著者がそういう気性なんだと思う。つまりジャックは、著者のリー・チャイルドの分身でもあるんだろうね。読み終わったばかりなのに、次の作品が気になって仕方ない。本気でジャックに惚れてしまったらしい。
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