今日の言葉 5月12日
『記憶は愛を否定する』
思考をはさまずに愛することは可能でしょうか? 思考とはどういう意味でしょう? 思考とは、喜びや痛みの記憶に対する反応です。不完全な経験が残していく残留物なき思考などありません。愛は情動や感情とは異なります。思考の領域に愛を持ち込むことはできません。
愛が存在するためには、記憶のプロセスが終わらなければなりません。記憶は経験が存分に、完全に理解されない時にのみ生じます。記憶とは経験の残滓にすぎません。存分に理解されなかった課題の結末なのです。人生は課題とそれに対する応答の連続です。課題は常に新しいのに、応答の方はいつまでたっても古いまま。条件づけであり、過去の産物であるこの応答は、理解されるべきであり、律されるべきでも、非難されて追い払われるべきでもありません。
つまり新たな心で、存分に、あますことなく日々を生きる、ということです。このような全き生き方は、愛がある時にのみ可能です。心(ハート)が満ち足りている時にのみ可能なのです。言葉や精神によって作られた様々な物事で心(ハート)が満ちあふれている時にではなく。愛のある時にのみ、記憶は止みます。すると一つ一つの動きが新たに生まれるのです。
〜クリシュナムルティ著『四季の瞑想—クリシュナムルティの一日一話』より〜