闇の中に光を見つけた男
日本中が煮えたぎっていますね。熱中症で亡くなる方のニュースをよく目にします。39度を超えた場所もあるとのこと。それなら体感的には軽く40度を超えていますよね。ちょっと涼しくなる写真です。
昨日の散歩中に見つけた花です。この白さが涼しさを感じさせてくれますね。神戸も30度は超えているはずですが、自宅は山からの風が吹き込んで意外に過ごしやすいです。このまま夜まで吹き続けてくれたら、今日も熱帯夜をぐっすり眠って過ごせそうですね。
さて、以前から気になっていたのですが、ずっと見逃していた映画をようやく今日の午後に観ました。
『Ray/レイ』という2004年のアメリカ映画です。この映画の公開直前に亡くなった、レイ・チャールズの伝記映画です。
レイ・チャールズについて説明する必要はないですね。R&Bとゴスペルを融合させて、ソウルミュージックを完成させた最高のミュージシャンです。当然ながら、グラミー賞も受賞しています。7歳の時に緑内障で視力を失くした盲目のピアニストです。スティービー・ワンダーも盲目ですが、この二人は私の洋楽人生にとって欠かせないアーティストです。
主演を演じたのはジェイミー・フォックスです。レイが生前に映画の撮影に立ち会った時、ジェイミーに対して自分の後継者だと言ったほどの素晴らしい演技だと聞いていました。実際に映画を観て、すぐにジェイミーだということを忘れました。私はレイの若い頃の姿をあまり知りませんが、それでもその仕草が驚くほど似ています。本人の若い頃のドキュメントかと錯覚しそうでした。アカデミー主演男優賞は納得ですね。
レイの有名な曲はいくつも知っていますが、その人生はあまり知りませんでした。ヘロイン中毒に苦しむ姿は壮絶でした。「あなたには音楽しかないでしょう」と妻に言われて、更生施設で薬害から抜け出すシーンは、あまりにリアルで言葉にならないほどでした。レイの楽曲がヘロインから生まれたなどと揶揄する人もいますが、私は全く違うと思います。この映画を観て、そう感じました。
レイがヘロイン中毒になる前に、彼はすでに心を病んでいたのだと思います。強烈な人種差別。貧しい生活。目の前で弟の水死を経験したトラウマ。そしてその直後の失明。彼は7歳にして四重苦を抱えていたも同然でした。
目が見えないという闇は、レイの人生そのものを象徴していたのでしょう。そこに唯一の光をもたらしてくれたのが、音楽だったのだと思います。音楽で生きていこうと決意してシアトルに向かいます。映画はそこから始まりますが、そこでも四重苦は襲いかかります。黒人ゆえ、あからさまな差別を受けます。貧しかったから稼ぎたいと思っても、目が見えないことを悪用されてギャラを横領されます。さらに目の前で弟を死なせた罪悪感が、床や自分の荷物が水浸しになるという幻覚を誘発します。
ヒット曲を出さなければいけないプレッシャーのなかで、ヘロインに逃避してしまったのでしょう。それほど彼は視力だけでなく、心にも闇を抱えていたのだと思います。でも目が見えない分、音に関しては超絶的な能力を発揮しています。スティービーが名曲を生むのも、きっと同じ理由だと思います。常人には聞こえない音やメロディを感じるのでしょう。そのあたりも映画では、うまく描かれていたと思います。
貧しかったので食べていくため、若い頃は人に受ける音楽を演奏していました。だからモノマネから抜け出せずに、苦しむ時期があります。でもある日、自分は自分らしくあればいいとレイは感じます。そこからオリジナリティーに溢れたヒット曲を量産するようになります。映画もこの部分を強くフォーカスしていましたね。
私がこの映画を通じて感動したのは、アリサというレイの母親です。女手ひとつでレイたちを育ててきました。次男を水死事故で亡くし、長男は視力を失います。でもレイに対して気丈に生きることを教え続けます。目が見えなくても自力で生きることができるようにしたかったのでしょう。盲学校に通っている子供時代に母親は無理がたたって亡くなります。でも、その母の教えがあったからこそ、あの素晴らしいミュージシャンが誕生したのだと思います。
映画公開にあたってありのままの自分を映像化してほしい、とレイは言ったとのこと。だからこそ、悩み苦しむレイがこの映画で表現されています。とても感動して、涙しました。素晴らしい映画でした。今夜はApple Musicでレイ・チャールズの音楽を聞いてみようかな。
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