SOLA TODAY Vol.552
こんな死に方がいい。
率直にそう思う方法がある。以前から知っていたものけれど、壁が高くて、厚い。
そんな壁を突き崩そうとしている医師の記事を読んだ。
とても素晴らしい記事なので、時間のある方はぜひリンク先を読んで欲しい。その方法とは、「鎮静」というもの。
主にホスピスで使われているもので、ガンの末期患者に使用されることが多い。余命を宣告されて、苦痛を抱えたまま死を迎えるのは堪え難い。せめて息を引き取るときには、眠るようにおだやかに逝かせてあげたい。そのために使われているもの。世界の医療現場で使用されている。
その薬は「ドルミカム」という名前。ボクも薬の名前は初めて知った。だけど一般的にはなじみのあるもの。胃カメラを飲んだことがある人なら。経験していると思う。この薬を投与されると、眠っているような感覚で胃カメラが終わる。
この「ドルミカム」が「鎮静」に利用されている。これは決して安楽死じゃない。もちろん睡眠薬なので、過剰摂取すると呼吸が止まってしまう。医師が「鎮静」で使う場合は、当然ながら適切な量が投与される。
本人はぐっすりと眠ってしまうから、もちろん家族と話すことができない。その状態で、死の瞬間を受け入れるというもの。この薬で命を止めるのでなく、苦痛を取り除くことが目的。
この記事を読むとわかるけれど、患者本人が死を自覚できるのがいい。昏睡状態で逝ってしまうのではなく、家族に最後の言葉をかけることができる。自分で納得した時期を選び、眠りにつくことができる。この記事に登場する人も、こう述べている。
「先生、今日が丁度良い日です。もう眠らせて下さい。では、家で待ってますので、手が空いたら来て下さい」
このセリフのとおり、最近は在宅でも「鎮静」を選択することができる。ただ最初に書いたように、壁が高くて厚い。適用に当たって、きびしいガイドラインが出されている。
まずは末期ガン等の余命宣告を受けていることが条件。そして本人に堪え難い苦痛があること。それを医師が認めること。もちろん本人の意思は必要だし、家族の同意も欠かせない。
つまりそのどれかが欠けると、「鎮静」を使うことができない。本人が苦痛を感じていても、医師が反対すればそれでアウト。医師が認めて本人も希望しているのに、家族が拒否すればアウト。
この記事はホスピス医療に関わってきた著者が、「鎮静」に対して新たな提言を行っている。それはこのガイドラインを見直すべきでは、というもの。
何より本人の意思が優先されるべきだろう、と著者は述べている。そして患者の意思を尊重するのならば、苦痛にさいなまれる前に「鎮静」を選択できるようにするべきではないか、という意見を持たれている。
自分の意識がはっきりして、家族に別れの言葉をかけられる状態で、「鎮静」を選択させてあげるほうがいいのでは、とのこと。
ボクもそう思う。自分が患者の立場なら、ぜひそうして欲しい。死ぬことが確実ならば、多少人生の日時が縮まってもかまわないから「鎮静」を選びたい。気持ちを固めて、いい日を選んで逝きたい思う。
尊厳死という言葉が叫ばれるようになって久しいけれど、まだまだこんな段階だといういこと。この医師のような人が増えて、活発な議論が進むことを願うばかり。死について真面目に考えることができる。とても素晴らしい記事だった。
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