現実は眼に映る姿とは異なる
ボクは高校生のとき、文系人間だと思い込んでいた。その理由は、ただ数学が苦手だったというだけ。でもその思い込みは強い。
必修である物理の単位を取るのに、なんとか知恵をしぼった。文系のボクに物理なんて必要ない。とりあえず卒業できる単位され取れたらいい。
赤点を取らないために必死でひねり出したのは、語句の暗記。物理の試験では、必ずと言っていいほど用語の説明を問うものがある。だから試験前になると、出題範囲の語句だけを覚えた。暗記は得意だったから。
その結果、計算問題をたった1問も解くことなく、ギリギリで赤点を逃れて単位を取得した。そこまで必死になるのなら、ちゃんと勉強すればいいのねw
ところが不意義なもので、外国語大学を中退して、ボクが卒業したのは理系の畜産科。卒業論文なんて、山羊の染色体の研究だったからね。そして毛嫌いしていた物理は、今のボクにとってもっとも興味を持っている分野。
思い込みで人生を決めつけてしまうと、もったいないということ。知らないことのなかに、自分の人生を変えるような宝物が隠されていることを忘れないほうがいい。そんな物理好きのボクが、文系の人にもオススメする本がこれ。
『すごい物理学講義』カルロ・ロヴェッリ著という本。
著者はイタリアの物理学者で、専門家だけでなく、一般の人にも物理の世界を伝えようとしている。出版された著作の多くが、ベストセラーとなっている。この本の原題を直訳すると、今日のブログのタイトルになる。
とても意味深なタイトル。このまま邦題でもいいと思うけれど、より親しみを持たせるために『すごい物理学講義』というタイトルになったんだろうね。
この本は古代ギリシャ時代からスタートする。デモクリトスを皮切りに、ニュートンやファラデーまで登場する。まずは古典物理学の概要が紹介される。
その次に登場するのは、もちろんアインシュタイン。特殊相対性理論から始まり、一般相対性理論にたどり着く。さらに同時期に注目を浴びた、量子力学の世界が紹介される。でもここまでは導入部。
一般相対性理論は、宇宙レベルの出来事においては完璧なもの。そして量子力学は、電子や中性子等の素粒子の世界では同じく完璧。
ところがマクロである一般相対性理論にミクロの量子力学を持ち込むと、矛盾した部分が出てくる。反対でも同じ。だからこのマクロとミクロの理論を統一するものが、現在の理論物理学では求められている。
その代表が「超ひも理論」というもの。この理論に関してはいくつも本が出ていて、世界でも注目されている。ボクも何冊か読んだので、概要程度は知っている。
だけどこの本は、その「超ひも理論」に代わるものとして注目されている理論が紹介されている。
それは「ループ量子重力理論」というもの。この理論について解説された本は少なく、おそらく日本語で読めるのはこれくらいでないだろうか?
著者のカルロはこの理論の第一人者だから、伝えようとするその熱量はすごい。読者に対する強いメッセージが、この本に込められている。ボクもこの理論を初めて知って、なるほどなぁ、と感嘆した。
特に気に入ったのが、時間に対する概念。時間というものは連続性のなかで存在しているのではなく、粒子の関係性によって現れるという考え方。だから時間は現れたり、消えたりする。なんかいいよね。
もうひとつ好きなのが、エネルギーのやり取りは、情報交換だということ。情報というものは、相手があってこそ初めて成立する。うまく説明できないけれど、この感覚が、とても腑に落ちる。
説明の過程で方程式が使われていたりするけれど、物理や数学の知識がない人でも読めるように書かれている。時間をかけてゆっくり読めば、「ループ量子重力理論」の概要が理解できると思う。
マジで、本当に「すごい物理学講義」だった!
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。
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