ダーク・ヒーローに惚れた
今日は朝から一日中素晴らしい晴天でした。年始も好天のようなので、神戸では初日の出が拝めそうです。早起きできたら、朝日を写真に残したいと思っています。
昨日は帰省のピークだったようですし、今日あたりは大掃除やお正月の準備に追われている方が多いでしょう。私は相も変わらずいつもと同じ生活をしています。自宅にいるので午前も午後も原稿の推敲に十分時間を割けました。明日は今年最後の買い物に出かけますが、結局はいつもと同じでしょう。仕事もする予定です。
それでも今朝はいつもの掃除のあとに、台所の排水口を徹底的に磨きました。大掃除は11月ですので、どうしても年末には汚れが目立ってきます。でもこれでスッキリと新年を迎えることができます。いつも思いますが、排水口の掃除は気持ちがいいです!
さて、久しぶりの読書感想です。今年最後に読了した小説になります。
『キングダム』新野剛志 著という本です。
小説を読んだり映画を観たりしていると、いわゆる「いい人」しか登場しない物語があります。全体にほのぼのとしていて、何かトラブルが起きたりはしますが、立場が違うだけでみんな「いい人」。読み終わったり、観終わったりした後、心が温かくなる物語です。
ところがこの物語は正反対! 悪い奴しか出てきません。現代社会に存在する、ありとあらゆる悪がリアルに描かれた物語です。警察までヤバイ。リアリティに富み、ノンフィクションを読んでいるような気分になります。
主人公は真嶋貴士。過去に解散した武蔵野連合という暴走族OB会のナンバー2です。あらゆる悪事に手を染め、仲間がやられたら何倍にも返して復讐する恐ろしい男です。闇金組織や振り込め詐欺の組織を統括していて、億単位の金を自由に動かせます。当然ながら後ろ盾に暴力団がいます。
しかし真嶋の目的は東京から既存の暴力団を追い出し、自分が実権を握ることです。そのためにロリコン専門の売春ラウンジを開き、若手の政治家との癒着を模索しています。政治権力を味方につけることで警察庁を動かし、ヤクザたちを追い出す計画なのです。
なぜそこまで暴力団を敵に回すのか。それは自分の母親を自殺に追い込んだ復讐が動機のひとつです。でもそれはほんの些細なこと。この真嶋を動かしているのは、この男に魂に存在する本能です。関東一円の暴力団を敵に回した男が、知力と暴力と組織力を使って闘う物語です。
ところが、とんでもない悪党なのですが、めちゃカッコイイ。次から次に命の危機にさらされても、肝っ玉のすわったこの男の諦念が美しい。八方塞がりで諦めを見せつつ、どこか楽しんでいます。その姿に共感すると、心の中で応援したくなります。とても勝つ見込みのない相手に立ち向かう彼の姿に、読者は自分を投影しようとするからでしょう。だから敵をやり込めたシーンでは、自分のことのように気持ち良くなります。
このダーク・ヒーロに惚れました。雰囲気的には続編がありそうな終わり方なので、とても期待しています。そしてこの主人公を通じて、現代社会の裏側を勉強することができました。おそらく実際に同じようなことが行われていると思います。
それにしてもこの著者、この小説のような社会の暗部をどのようにして調べたのか興味あります。それでプロフィールを調べてみると、新野さんはとてもユニークな経歴で作家としてデビューされています。
それまでの仕事を辞めて、ホームレスになるのを覚悟で小説家を目指されました。実際に2年半ほど列車の始発やカプセルホテルで過ごし、その期間に江戸川乱歩賞の受賞作を完成されたそうです。まさしく背水の陣ですね。もしかしたらそうしたホームレスの時期に、この小説の下地になるような情報を手にされたのかもしれません。物語全体に流れる独特のダークサイド感は、私には書けない文章です。
とてもいい刺激になりました。今年は数え切れないほどの小説を読みました。来年もそのペースを崩さず、さらに多くの小説を読み込んでいきたいと思っています。
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