SOLA TODAY Vol.537
ちょっと前、ある出来事が話題になっていた。それは牛丼の吉野家でのこと。
ソフトバンクのユーザーに配信された無料クーポンを使用する人が、行列を作っていた。1時間以上も寒風のなかで待つ人もいたらしい。
そのニュースを見て、マジでアホかと思った。たかだか400円弱の牛丼を無料で食べるため、1時間も並ぶなんて。ホームレスで無職の人なら理解できる。だけどスマホユーザーということは、そんなことはないはず。
もしフリーターだとしても、時給400円以下で自分の貴重な時間を費やしていることに気がつかないのだろうか? こんなアホなやつらは一部だけだと信じたいし、日本人はそんなことないと思っていた。
だけど日本人は、やっぱりアホだった。
「お金より時間が大切」と考える国・地域ランキング 日本人は時間よりお金が大事?
お金と時間、どちらが大切か?
そんなアンケートを17ヶ国で取った。『時は金なり』と言うけれど、とりあえず分離して考えてみよう、ということだろう。
なんと驚いたことに、お金より時間が大切だと答えたのは、1位が中国で、最下位の17位が日本だった。お金より時間が大切だ、という人が中国では41%いる。ところが日本ではたった11%しかない。そりゃ平気で吉野家に並ぶはずやわ……。
年齢による差はあるけれど、高齢者に限っていえば中国は日本の高齢者の6倍という数字が出ている。なぜこんな結果になるのだろう?
ボクなりに少し考えてみた。性別や年齢別の詳しいデータを見ないとなんとも言えないけれど、全体的に考察して感じたことがある。
まずは『お金』に対する概念が、日本と中国では大きくちがうということ。中国ではキャッシュレス化が浸透している。カード払いが普通で、ちょっとした支払いでもQRコードが使われている。
『お金』というものは価値交換のための媒介にすぎず、お金そのものに価値があるのではない、ということが中国では理解されているからだろう。
それに比べて日本人の『現金信仰』は異常なほど。ただの紙切れに過ぎないのに、貴金属のような価値を紙幣に対して抱いている。『信用』がお金の価値を支えていることを忘れ、『円』という仮想通貨を無条件に信用している。
だから時間がお金と同等、あるいはそれ以上の価値があると思えない人が多いのかもしれない。お金さえあれば、時間は無条件に増えると思っているのかも。
もう一つの理由は、日本人は『平和ボケ』しているのでは、ということ。
それは高齢者で6倍もの差が出たことから想像できる。最近になって中国の近代史に関する本をいくつか読んだ。ボクたち50代以上の世代の人たちは、大勢の同胞が飢えて死んだり、粛清によって処刑されるのを見てきた。
人間の命のはかなさを目の当たりにしてきたし、自由な時間というものがどれほど貴重なものなのかを実感しているんだと思う。その気持ちは子や孫に伝えられていて、『時間』の価値を高めているのではないだろうか。
時間の価値は、自分の人生の価値でもある。お金や権力を持っていた人が、あっという間に人生という『時間』を奪われてきた。だからこそ中国の人は、お金よりも時間が大切だと実感しているのかもしれない。
いろいろなことを考えさせられる、興味深いアンケート結果だった。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。