SOLA TODAY Vol.696
いよいよ来週になると、お盆の帰省ラッシュが始まる。列車はすでに予約でいっぱいだろう。自由席にさえ立てない人が、出入り口のデッキに押しやられたりする。
そしてもっとも辛いのが高速道路の渋滞。いくらエアコンの効いた車のなかにいても、お腹は減るしトイレにも行きたいしで、肉体だけじゃなくて精神的なストレスはかなりのものになる。
ところが帰省ラッシュのような一過性のものではなく、恒常的に渋滞している地域もある。そうなるとストレスを超えて、諦めの境地になるしかないだろう。そんな恒常的な大渋滞を、ある方法で解決した国がある。それは中国。
中国の杭州市の渋滞は、厳しい渋滞で有名だったそう。片側一車線の狭い道が多く、ちょっとしたトラブルでも車は止まってしまう。あっという間に杭州市全体の交通が麻痺するらしい。
そこで2017年にあるものが導入された。「ET都市ブレイン」という名の人工知能だった。それがどのようなものか、記事から抜粋してみよう。
『ET都市ブレインは、交通量を把握し、それに合わせて交通信号の点滅を制御する。単に通行量の多い方向の信号を青にするのではなく、機械学習により、地域全体の車の平均速度を高め、平均通過時間を短くなるように信号を制御する』
その効果は絶大で、広い中国全土でも有名だった渋滞の街が、一気に静寂を取り戻したとのこと。決まった時間で信号が変わるのではなく、道路の状況に応じて切り替わる。常に全体を把握しているので、広い道路だけを優先して信号を青にするというようなことがない。
ある意味『神の視点』のようなものだよね。あるいは蟻の行進を見ている人間の視点かもしれない。1台1台の自動車はその周辺しか把握できないけれど、人工知能は全体を見て判断している。だから常に道路がスムーズに流れる。
さらにすごいのは、交通事故が起きたときの対応。カメラによって事故の状況を判断して、すぐに警察等へ通報する。そして事故渋滞が起きないように、適切な信号に切り替える。そのうえ、緊急自動車が通行できるよう、道路の確保まで行うらしい。マジですごすぎる。
もしこのシステムを日本で導入しようとしたら、多大な労力と時間がかかるだろう。地域の反対派は妨害運動をするし、行政サイドも法整備に時間がかかる。与党が法案を提出しても、反対のための反対しかやらない野党が邪魔をするだろう。えいや!で実行できるのは、中国だからだと思う。
こんなニュースを見ていると、日ごとに日本と中国の格差が広がっているのを痛感する。もしかすると、もう追いつけないレベルになっているかもしれない。
きっと来週になればあいも変わらず、日本では延々と続く高速道路の大渋滞の様子がニュースで流れるんだろうなぁ。
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