SOLA TODAY Vol.804
年末の風物詩と言っていいM-1グランプリ。関西人なので漫才は好きだけれど、この番組は興味がないので見たことがない。
グランプリ受賞者は毎年知っている人だし、その後の活躍も目にしている。ところが今年に限って、受賞者が決まってからのほうが騒がしい。
とろサーモンの久保田さんと、スーパーマラドーナの武智さんが、YouTubeを通じて審査員である上沼恵美子さんに対して侮辱的な発言をしたことで炎上している。
ボクは毎週欠かさず録画をして、上沼さんが司会している『怪傑えみちゃんねる』という番組を見ている。スーパーマラドーナはゲストとして何度も出演していたから、この一報を知ったときは少し驚いた。正直に言って、アホやなぁという感想しかない。
心で何を思うかは自由だけれど、公共の場で言っていいことと悪いことがあるからね。酔った勢いとはいえ無意味な行動だし、負け惜しみにしか見えない。彼らの発言を擁護する声もあるみたいだけれど、社会人としては配慮に欠けたやり方だったと思う。
そんな今回の出来事について、とても興味深い記事があった。
M-1上沼審査は的外れ!?~お笑いもビッグデータで評価できる時代~
準決勝に残った10組の漫才師に対して、審査員がどのような採点をしたのかグラフ化したもの。このデータだけを見ていると、たしかに上沼恵美子さんの評価は、他の審査員に比べて振れ幅が大きい。
それぞれの漫才師に対する最高点と最低点をつけている審査員に、上沼さんの名前が登場してくる。このグラフを見れば、たしかに好き嫌いが激しいということがわかる。いいものはいい、ダメなものはダメ、というのがはっきりしている。
ところがこの記事はそれだけで終わっていない。テレビを見ている視聴者が、漫才の途中でテレビから離脱した状況を重ね合わせている。面白い漫才なら最後まで見るだろうし、イマイチなら他のチャンネルに変えてしまう。
興味深いのは視聴者のデータと上沼さんの採点が、ほぼ完全にリンクしているということ。つまり上沼さんの採点は、一般視聴者の好みと同じ傾向を示していることになる。感情で採点するな、と上沼さんを揶揄した二人の意見は的外れだという感覚が拭えない。
そもそも何かを評価するということに関して、好き嫌いを排除することは無理。どれだけ客観的で公平に評価しようと思っても、人間なんだから好き嫌いに影響されるのは当然だと思ったほうがいい。
小説の世界なんか、まさにそうだからね。出版社が主催する新人賞に応募しても、編集者に読んでもらう前に下読み専門で雇われた人が原稿に目を通す。下読みしている人のブログを読んだことがあるけれど、最初の数ページを読んだだけでゴミ箱行きになるのが普通らしい。
要するに下読みの人の好き嫌いが影響していて、編集者の目に届かない原稿が山ほどある。実際とある出版社の新人賞で一次通過さえしなかった作品が、別の出版社で新人賞を取って、そのまま芥川賞を受賞したという例もあるらしい。
人間社会は個人の好き嫌いで動いている。そのことを自覚したほうがいいと思うな。
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