SOLA TODAY Vol.806
京都で生まれ育って40年以上暮らしていたので、故郷に対する思い入れは強い。それゆえいい面だけでなく、気になることも目に付く。
気になっているのは、古いものと新しいものとの関係性。何を残して、何を変えていくのか、そのあたりの見極めが難しい。
それは祇園の芸舞妓事務所で働いていたときに痛感していた。古いしきたりが残る祇園町だけれど、現在の舞子さんや若い芸妓さんは平成生まれになった。当然ながら若い世代に反発が起きる。
ボクが在職していた20年ほど前でさえ、舞子脱走事件があってワイドショーを賑わしていた。今なら両者のギャップはさらに広がっているかもしれない。そうなると、双方からの歩み寄りが必要になってくる。
変えていくべき古いしきたりはあるだろうし、平成世代が受け入れていくべきものもあるはず。だけど最初に書いたけれど、その見極めは非常に難しい。
それは京都市の行政にも現れていて、街の景観問題は常に議論されている。古いものを残そうとすれば、高層建築に対する規制が必要になる。でもそれは同時に、新しいものを拒むという排他的な傾向になりやすい。
今年になって京都市長は、高さ制限を見直すことを発表している。このことだけでも、京都という街が強い葛藤を抱えているのがわかる。
京都で観光客排斥運動が起こる恐れアリ…!インバウンドの深き闇
その葛藤を加速させているのが、京都観光に訪れるインバウンドの人たち。イタリアでオーバーツーリズムが問題になっているが、日本では京都がその先鋒として対策を迫られている。
市民が市バスに乗れないことや、道路の渋滞だけではない。民泊利用者によるトラブルも急増しているらしい。場所がわかりにくいので、深夜に訪れた観光客が間違ってインターフォンを押すことが頻発しているそう。
それで民泊を規制したことによって、今度はホテルの建設ラッシュが続いている。だけど高さ制限があるとキャパに問題が生じるので、景観問題が浮上してくる。古いものと新しものがせめぎ合い、どっちつかずになっているのが今の京都だと思う。
日本の現状を考えると、経済が成熟したのでこれ以上の成長は望めない。歴史ある日本の利点を生かすとしたら、観光立国になっていくしかないと思う。それを後押しするように、東京オリンピックと大阪万博が控えている。
当然ながら古都である京都には、外国の観光客が大勢で押しかけるだろう。市民の不満や苦情が出るのはわかるけれど、ここが勝負どころだと思う。今以上に京都が世界に名だたる観光地となるよう、この葛藤を乗り越えてほしい。生粋の京都人として、心からそう願っている。
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