SOLA TODAY Vol.662
古い映画を観るときに、よく見かけるテロップがある。「この映画には不適切な表現が含まれています」というもの。
ボクが子供のころに使っていた言葉のなかで、差別用語としてNGになっているものが多い。親しみを込めた言葉であっても、それが意味することゆえに使えなくなっている。
言葉そのものが問題というよりは、使っている人間の意識が影響しているように思う。時代によって常識や概念というものは変化する。LGBTなどがいい例だろう。それは日本だけでなく、アメリカでも問題になっている。
「大草原の小さな家」の著者名、米文学賞から外される 差別表現理由に
『大草原の小さな家』という物語を知っているだろうか? 読んだことがなくても、テレビドラマで見たことがある人もいるはず。著者はローラ・インガルス・ワイルダーという作家。
この作家の名前を使った児童文学賞で、ローラ・インガルス・ワイルダー賞というものがあるらしい。だけど名前が変更されて、児童文学遺産賞となったとのこと。その理由として、ローラ・インガルス・ワイルダーが作品のなかで差別的な表現を使っていたことが挙げられている。
「西部にいるのはインディアンだけで、人は誰も住んでいない」
というような先住民や黒人に対する差別的な表現が多用されているとのこと。まぁたしかに、この文章はまずい。先住民は人間ではない、と言っているのと同じだから。だけど当時の感覚としては、特異なものではないと思う。
この名称変更はどうなんだろうね? ボクはどうもすっきりしない。
だって今でもこの著者の本は普通に出版されている。作品に使われている表現が時代背景に基づく言葉だと、読者は理解して読んでいると思うんだけれど。作品が評価されているのは、別の部分で読者に訴えるものがあるからだと思う。
だったら日本の文学賞でも、問題になるものがあるはず。江戸川乱歩なんて、おそらく使用禁止の言葉が多用されているだろう。それでも江戸川乱歩賞は権威ある文学賞として認知されている。このアメリカのようなことを言い出したら、キリがないと思う。
現代の作家がNGワードを使わないことは必要だと思う。ボクもできる限り注意している。それは今の時代の概念を理解しているから当然だろう。漫画でも、連載作品が単行本になったとき、不適切なセリフが訂正されることが多いらしい。
でも過去の作品にそこまでする必要はないと思う。それぐらいの頭の切り替えは、読者にできると思うんだけれどなぁ。もしかしたら文学賞を運営する人たちは、一般の読者はそんなこともできないアホだと思っているのかもね。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。