SOLA TODAY Vol.644
高齢者の運転による人身事故が後を絶たない。先日も90歳の女性が赤信号で突っ込んで歩行者を死なせる事故があった。もはや社会問題といってもいい。
昨日のニュースを見ていて、驚きのあまり開いた口がふさがらないという記事があった。
昨年の3月に改正された法律で、75歳以上の高齢者ドライバーに対して医師による認知症の検査が強化されている。1年間の検査の結果によって、「認知症のおそれがある」と判断されたドライバーは5万7千人を超えたらしい。
でも恐ろしいのは、この結果じゃない。さらなる医師の診断によって運転免許の取り消しを受けた人が1892人。そして高齢による自主返納をした人が1万3563人。つまりまだ4万人以上の人が認知症の可能性があるまま運転していることになる。
この数はまだまだ増える。高齢者の免許更新は3年に1度だから、この先2年間で同じ数の人が「認知症のおそれがある」と判断されるかもしれない。同じ比率だとすると、約12万人の認知症予備軍ドライバーがハンドルを握っていることになる。
もちろんそのすべての人に問題があるわけじゃない。法律を遵守して、安全運転をしている人は大勢いるだろう。だけど検査によって認知症の可能性があると判断されたということは、運転能力が通常より低下しているのが事実。
これはマジで怖い。最初に書いた90歳の女性は、赤信号だとわかっていて突っ込んでいるんだからね。認知力の問題というより、人間として最低限の道徳観が欠如しているとしか言えない。
ボクは車を手放したから、高齢者ドライバーの事故に巻き込まれるリスクは低い。だけど歩行者に突っ込んできたり、先日はタクシーの乗客だけが死亡するという交通事故もあった。自分でハンドルを握らなくても、無謀なドライバーによって怪我を負わされるかもしれない。
これは抜本的な道路交通法の見直しが必要な問題だと思う。『家族はつらいよ2』という映画で、橋爪功さんが演じる老人が免許の返上をかたくなに拒むというシーンがあった。自分だけは大丈夫だと思って、頑固にハンドルを握り続ける人は多いだろう。
免許証を取り上げられても、無免許で運転する人だっている。住んでいる場所によっては、車がないと困る地域もあるだろう。でも近年の高齢者による事故は、あまりにも悲惨すぎる。
完全自動運転車が実用化されるまでは、まだしばらく時間がかかる。このままではさらに犠牲者が出るだろう。自主返納に期待するのではなく、何らかの強制的な手段を決断する時期が来ていると思う。
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