映画化でわかる脚本の視点
天気予報で今日は12月下旬の寒さだと脅されていたけれど、思っていたより過ごしやすい1日だった。確かに空気は冷たいけれど、昨日との気温差に閉口するほどでもない。まぁ神戸から出ていないので、他の地域はわからないけれど。
さて、最近になって懐かしい作品の原作を読み返している。『ミレニアム』シリーズという映画化された作品で、著者はスウェーデンの作家であるスティーグ・ラーソン。スウェーデン版の映画作品の完全版が配信されたことで、久しぶりに全てを鑑賞した。その勢いで20年ぶりくらいに原作を読み返している。
そこで新ためて気がついたのは、初めて映画化されたスウェーデン版の作品と原作との違い。その映画は何度も観ているので、ボクの記憶が混ざり合っていたらしい。本の感想は読了してから書くとして、こうなるとこの作品のハリウッド版がどうなっていたか気になった。ということでこれまた久しぶりに鑑賞した。
2023年 映画#191
『ドラゴン・タトゥーの女』(原題:The Girl with the Dragon Tattoo)という2011年のアメリカ映画。二人の主人公であるミカエルとリスベットを、ダニエル・クレイグとルーニー・マーラが演じたハリウッド版。映画館でも観たし、DVDになってからも鑑賞している。だけどやはり他の作品や原作と混ぜこぜで記憶していた。
ボクはルーニー・マーラの大ファンだから、この作品のリスベットも大好き。ちなみに彼女が主演している『キャロル』という映画はかなりオススメの作品だよ。クリスマスシーズンに最適な切ない物語だった。
話を戻すと、このハリウッド版はスウェーデン版よりも原作に忠実に描かれていた。有名な物語なのでストーリーは割愛しよう。原作を忠実に踏襲していると感じた最大の場面は、ミカエルとリスベットが協力して殺人事件の真相に迫ることになったきっかけ。
スウェーデン版では、自分のパソコンをリスベットがハッキングしたことを知ったミカエルが、彼女の能力を調査に使いたいと協力を依頼する。
ところが原作では事件の真相に迫ったミカエルは、自分一人では無理だと判断。どうしてもアシスタントが欲しい。そこで依頼人の代理を務めている弁護士に紹介してもらったのがリスベットだった。ハリウッド版ではそのままで映像化されている。この方が自然な流れだと思う。
ただハリウッド版は事件の真相に迫ることに主眼が置かれ、ミカエルが代表となっている『ミレニアム』という出版社のメンバーについて全く触れていない。共同代表のエリカだけしか登場しない。ところが『ミレニアム』内部には裏切り者がいた。
スウェーデン版ではこの裏切りについてかなりの時間を割いていた。それゆえミカエルとリスベットの関係が圧縮されていたように思う。例えば名前と数字が残されが暗号がある。それは電話番号だと思われていた。ところがそれは聖書の引用だった。
この事実を知るヒントをもたらしたのは、原作では離婚した元妻と暮らしている娘。ハリウッド版もその設定を使っている。だけどスウェーデン版はミカエルとリスベットの関係を圧縮するため、その暗号を解いたのがリスベットになっていた。ミカエルの娘については存在さえ触れていない。
こうして映画化作品と原作を比べていると面白い。脚本家や監督を含めた映画の制作者が、原作に対してどのような視点を持っているのかよくわかる。要するにそれほど膨大な内容が網羅された原作だということ。ということで今夜もこの原作を楽しむとしよう。
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