原作の緻密さに改めて感動
スウェーデン版映画の完全版が配信されたことで、久しぶりに全ての作品を見直している『ミレニアム』シリーズ。著者のスティーグ・ラーソンが生前に執筆した3部作のうち、最初の作品の原作をようやく読了した。
2023年 読書#100
『ミレニアム1 ドラゴンタトゥーの女』下巻 スティーグ・ラーソン著という小説。上巻の感想については『原作のリスベットが大好き』という記事に書いているので参照を。
かなり久しぶりに原作を読んで、設定の緻密さに感動した。3部作の1作目であるこの作品はスウェーデンで最初に映画化され、その後にハリウッドでも映画化された。そのどちらの映画も観直してから原作を読み終えると、この物語の本質は原作を読まないと理解できないと感じた。
その本質とは、主人公の二人であるリスベットとミカエルの関係。ミカエルは中年の男性で、恋愛に関してはかなり自由奔放。一方リスベットも男性関係(女性とも寝るけれど)は多彩なものの、本気で恋をした経験がない。そんなリスベットが人生で初めての恋をした。その相手がミカエルだった。
もちろん映画作品でも二人の関係は描かれている。だけどリスペットのハッカー能力や、ぶっ飛んだスタイルが前面に出ていて、女性としての想いが大雑把にしか描かれていない。連続殺人事件の真犯人を見つけ出すことに主眼が置かれているので、それは仕方ないことだと思う。
でもボクのような長年のリスベットファンにすれば、原作に描かれている彼女の心の動きを映画化して欲しかった。リスベットは他人に心を開いたことがない。唯一本心を見せていたのが、パルムグレンというリスベットの最初の後見人。でも彼は病気になったことでリスベットに関われなくなった。
もう一人はミルトン・セキュリティーという会社の経営者であるアルマンスキー。リスベットは彼にも友情を感じているけれど、心を開いているわけじゃない。なぜならリスベットの心にはとてつもなく深い、深い闇が潜んでいるから。でもミカエルに対して、リスベットはその闇でさえ話せそうな気持ちになっている。
ミカエルは彼女の個人的なことを詮索しない。ありのままで見ていてくれる。ミカエルが何かを尋ねてリスベットが口を閉じると、それ以上のことを訊こうとしない。そんなミカエルの態度に、リスベットは素の自分でいられた。一緒にいることが幸せだった。つまり本気で恋に落ちてしまった。
だけど精神病扱いされて保護観察がついている自分とミカエルは釣り合わない。勝手にそう思ったリスベットは、ミカエルから距離を置こうとした。ところが第2作目ではそうもいかなくなる。彼女の心の闇に向き合うしかない出来事が起きるから。
原作と映画の比較で言うと、スウェーデン版とハリウッド版を足せばかなり原作に近くなると思う。だけど2〜3時間という映画の尺から見れば、連続ドラマにでもしなければ原作通りに映像化するのは難しいだろう。原作はどこを読んでもツッコミどころのない構成になっているから。
さて、シリーズ第2作目の原作を久しぶりに読もう。映像化されているのはスウェーデン版だけなので、これはすでに鑑賞済み。これまた映画との違いをチェックしながら楽しもうと思う。それにしてもリスベットは本当に魅力的なキャラだよなぁ。
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