国民の戦意を喪失させる犠牲
日本における第二次世界大戦、いわゆる大東亜戦争のイメージは夏が強い。広島と長崎における原爆投下、並びに終戦が8月だから。だけど日本が後戻りできない戦争に踏み込んだのは、12月8日に決行された真珠湾攻撃。冬に始まった戦争だった。
結果として戦争をやってしまった日本軍部。でも必死で戦争を避けようとしていた人は大勢いたはず。架空の物語だけれど、そんな人たちを描いた映画を観た。
2023年 映画#202
『アルキメデスの大戦』という2019年の日本映画。原作の漫画は読んだことないので予備知識なしで観た。でも原作を読みたくなるほど面白い作品だった。主演の菅田将暉さんは本当にすごい。他の作品でも彼の演技に見惚れてたきたけれど、この作品も本当に素晴らしい演技だった。
冒頭はCGを駆使したシーンで始まる。アメリカの猛攻撃を受けて日本の戦艦が沈没する。3000人以上の日本兵が犠牲になった。この段階でその戦艦の名前は明かされていない。物語は12年前に遡る。
海軍では新しい船の導入が検討されていた。しかし2派に分かれて激論が交わされている。嶋田繁太郎の一派は日本最大規模の戦艦を作ることを主張。だけど山本五十六一派は強固に反対。戦争の主流は戦闘機であり、空母を作るべきだと主張する。
嶋田派は大臣たちに裏工作を仕掛け、戦艦の製造を決定させようとしていた。だけど山本五十六は戦艦の見積金額が異常に低いことに目をつけた。数字を捏造して、会議を通過するようにしているはず。そこで戦艦の正しい見積金額を調査するため、ある民間人を海軍に入隊させた。
それが主人公の櫂直で菅田将暉さんが演じている。彼は100年に一度と言われる数学の天才だけれど、反戦主張をしたことで帝国大学を退学させられていた。偶然に彼と出会った山本五十六は、彼に日本の運命を託す。
「最強の戦艦が出来たら、国民の戦意は高揚して、軍部はアメリカとの戦争に突き進む。無益な戦争を止めるために、その戦艦の見積額が捏造だと証明して欲しい」と櫂直に依頼した。
紆余曲折があって、最終的には櫂直はその依頼を受ける。その証明課程が本当に面白かった。ハラハラドキドキだし、天才的な能力に圧倒された。そして最終会議で論破することに成功して、戦艦の製造は却下された。でもそれだけで終わらなかった。
櫂直は戦艦を設計した平山の真意を知って驚く。「最高の戦艦を設計したのは、日本を滅亡させないため」だと平山は言った。
戦争になるのは避けられれない。そして日本人は最後の一人になるまで戦うだろう。このままでは日本は滅亡してしまう。それゆえ最高の戦艦がアメリカ軍に沈没させられたなら、国民は日本軍の実情を知るだろう。そしてアメリカと戦うことの無意味さを理解してくれるはず。そのために設計したとのこと。
櫂直にすれば、戦争を止めるために戦艦の製造を却下させた。だけどこの戦艦がないと日本人は滅亡まで突っ走るかもしれない。そのことを悟った彼は、戦艦の製造を容認するという物語。つまり戦争を止めるための犠牲となる戦艦だった。そして名前が明かされる。
その名は『戦艦大和』だった。
いやぁ、本当に見応えのある作品だった。櫂直のキャラが最高だし、部下として全力を尽くした田中少尉が最高だった。その田中を演じているのは柄本佑さんで、二人のやりとりを見ているだけで楽しめた。来年の大河ドラマの藤原道長役でも、きっと素晴らしい演技を見せてもらえそう。
原作の漫画はもっと奥深く、櫂直は様々なことに関わっているみたい。機会があれば読んでみたいなと思う素晴らしい物語だった。
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